民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引|令和8年10月2日版の変更点7項目と実務対応
最高裁判所事務総局民事局の「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(検索では「準備の手引き」とも表記されます)が、令和8年10月2日に改訂されました。全49頁で、変更は7項目です。新しい制度の説明ではなく、関連付け後の証拠アップロード、補助者アカウント、招待キー、法人番号といった、施行後の実務で迷いやすい箇所への注意書きが中心になっています。本記事では、変更点を頁ごとに原文に即して整理し、事務所の手順書で直すべき点をまとめます。手引全体の構成は準備の手引の読み方(早見表)、前回の改訂は令和8年6月19日版の変更点をご覧ください。
令和8年10月2日版の変更点一覧(7項目)
裁判所ウェブサイトの更新事項と、手引49頁の修正履歴に記載された変更は次の7項目です。
| 頁 | 章 | 修正履歴の記載 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|
| 3頁 | mintsを利用した手続の全体図 | 関連付け後に速やかにデータをアップロードする必要がある旨追加 | 関連付け後、裁判所からの連絡を待たずに証拠等をアップロードする |
| 8頁 | 00 mintsアカウントの登録 | アカウント登録の申出に関する記載を修正し、アカウント登録ガイドのリンクを追加 | 士業者と補助者は士業者用フォームから届け出る |
| 9頁 | 00 mintsアカウントの登録 | 補助者アカウントに関する注意書きを追加 | 士業者アカウントとの紐づけ前に、補助者アカウントで電子申立て等をしない |
| 12頁 | 01 訴えの提起(電子申立て等) | 法人番号、外国籍の当事者の入力上の留意事項、PDFファイル提出時の留意事項を追加 | 法人番号は13桁。外国籍の当事者は、片仮名のフリガナにアルファベット表記を併記することが考えられる。申立ての趣旨・理由をPDFで出すときは、テキストデータを保持したPDFにする |
| 16頁 | 02 手数料の電子納付 | 手数料の納付情報につき、裁判所からの通知に関する記載を修正 | 通知の宛先は、納付義務者として選択された者とその補助者 |
| 20頁 | 04 被告代理人の応訴 | 招待キーの入力に関する注意書きを追加 | 招待キーは被告代理人自身が入力する |
| 38頁 | 09 執行手続 | 事件特定情報として提供される「符号」に関する記載を追加 | 判決書データ最終頁上部の数字を「符号」として提供することは想定されていない |
裁判所は、変更箇所に黄色のマーカーを付けたファイルも併せて公開しています。以下、頁順に見ていきます。
3頁・12頁:関連付けされたら、連絡を待たずに証拠をアップロードする
「mintsを利用した手続の全体図」(3頁)に、「関連付けされたら裁判所からの連絡がなくとも速やかに書証の画像情報等のデータをアップロードする必要」という一文が加わりました。「mintsの入力フォームへの入力上の留意事項」(12頁)にも、同じ趣旨の「裁判所からの連絡がなくとも速やかにアップロードする必要がある」という括弧書きが追加されています。
前提として、mintsでは訴え提起の時点で証拠をアップロードしません。事件が立件されて電磁的訴訟記録(事件情報)が作成され、原告訴訟代理人がその事件情報に関連付けられた後に、記録一覧画面から証拠説明書、書証の画像情報、電磁的記録の複製などをアップロードする設計です(3頁・12頁)。今回の追記により、このアップロードは裁判所からの連絡を待って行うものではなく、関連付けを確認したら自分から速やかに行うものであることが明確になりました。
訴え提起の手順書には、「訴状の提出」と「手数料の納付」に加えて、「関連付けの確認」と「証拠・証拠説明書のアップロード」を独立した工程として入れておくと漏れを防げます(mintsで訴訟提起する方法、mintsの証拠説明書の書き方と提出方法)。
8頁:士業者と補助者のアカウント登録は「士業者用フォーム」から
「アカウント登録の申出」の記載が次のように改められ、mintsアカウント登録ガイド(士業者編)へのリンクが追加されました。個人や法人等向けの登録ガイドへのリンクも併せて加わっています。
士業者及び士業者の補助者はmintsアカウント登録ガイド(士業者編)記載の各士業者用フォームから届出をする必要があります(ウェブサイト上の登録届出フォーム(一般個人等用)からは届出をしないようにしてください。)。
登録ガイド(士業者編)によれば、対象は弁護士・司法書士・弁理士で、各士業者団体の会員専用サイトに掲載された登録フォームから届け出ます。主な流れは次のとおりです。
- 会員専用サイトの士業者アカウント登録フォームから、メールアドレスを提供して届け出る
- 裁判所から招待メールが届く(届出から3開庁日程度が目安)。記載されたURLからサインアップし、必要事項を入力する
- アカウント設定画面で本人確認資料(所属する士業者団体の身分証明書、単位会発行の印鑑証明書など、士業者登録番号が記載されたもの)をアップロードし、士業者登録番号を入力する
- 審査が完了すると登録完了の通知が届く(3開庁日程度が目安)
補助者アカウントも、士業者アカウントを持つ者が会員専用サイトの補助者アカウント登録フォームから届け出ます。補助者の本人確認資料は不要です。社会保険労務士や行政書士など、その他の士業者がアカウントの取得を希望する場合は、一般個人編のガイドに従うこととされています(登録全般はmints本人確認のやり方)。
9頁:補助者アカウントは、紐づけ前に電子申立て等に使わない
補助者アカウントの説明に、「士業者アカウントと紐づけ前に補助者アカウントで電子申立て等をしないように注意する必要」という注意書きが加わりました。
同じ頁は、補助者アカウントが士業者アカウントと紐づけられると、士業者のアカウント名で電子申立て等ができるようになり、システム送達された書類を閲覧・ダウンロードするとその時点で送達の効力が生じる、と説明しています。紐づけは、士業者が自分のアカウント設定画面で補助者アカウントのmints ID(14桁の半角数字)を入力して行います(登録ガイド(士業者編))。補助者アカウントを登録しただけでは足りず、士業者側の紐づけ作業が終わったことを確認してから電子申立て等に使う、という順序を事務所のルールにしておく必要があります。
なお、補助者アカウントの基本ルール(登録名は氏「補助者●●××」・名「弁護士△△○○」、弁護士等1人につき5名分まで、事務員1人が作成できるのは10個まで)に変更はありません(mints補助者設定の完全マニュアル)。
12頁:法人番号は13桁、外国籍の当事者の入力、PDFの留意事項
「mintsの入力フォームへの入力上の留意事項」に、次の3点が加わりました。
- 法人番号:「法人番号」は13桁の番号(国税庁のウェブサイトで検索可能)であり、商業登記簿の12桁の番号とは異なる
- 外国籍の当事者:「氏名又は名称」欄に片仮名のフリガナを入力するとともに、括弧書きでアルファベット表記を併記することが考えられる
- PDFファイル:申立ての趣旨・理由をフォームに入力せずPDFで提出する場合は、テキストデータが保持されたPDFファイルをアップロードする
法人番号は、国税庁法人番号公表サイトで商号や所在地から検索できます。商業登記簿の12桁の番号(会社法人等番号)をそのまま入力しないよう注意してください(法人番号13桁と12桁の取り違え、外国人・外国法人が当事者の場合の入力)。
3点目は、紙に印刷した書面をスキャンして作った画像だけのPDFではなく、文書作成ソフトから直接書き出すなどして文字情報を保ったPDFを出す、という趣旨と読めます。
16頁:納付情報の通知は「納付義務者として選択された者」に届く
手数料の電子納付の流れのうち、「裁判所からの通知」の記載が次のように改められました。
裁判所において当該事件の手数料についての納付情報等が登録されると、納付義務者として選択された者(及びその補助者)のメールアドレスに通知が発出
裁判所が公開している変更箇所のファイルでは、「納付義務者として選択された者(及びその補助者)」の部分にマーカーが付いており、通知の宛先がこのように記載されました。共同受任の事件では、誰が納付義務者として選択されているかを事務所内で共有し、その者と補助者が通知メールを見落とさない体制にしておくことが重要です。通知を受けた後は、手数料納付情報一覧で「手数料」「納付期限」「納付番号」「収納機関番号」「確認番号」を確認し、ペイジーで納付する流れに変わりはありません(ペイジー電子納付の操作手順)。
20頁:招待キーは被告代理人自身が入力する
被告本人に訴状が送達されてから受任する場合の流れに、次の注意書きが加わりました。
招待キーの入力は、補助者ではなく被告代理人自身が行う必要(補助者が入力した場合には、補助者が事件情報に関連付けられることになる)
招待キー(12桁の半角英数字)は、裁判所が被告に出力書面で送達する際に同封する書類に記載されています。事務員が補助者アカウントで入力すると、補助者が事件情報に関連付けられることになります。受任後の初動は、弁護士本人がサインインして招待キーを入力し、関連付けを確認したうえで、答弁書・証拠・委任状・システム送達を受ける旨の届出を速やかにアップロードする、という順序になります(mints招待キーとは、被告代理人が関連付けされる方法)。
38頁:判決書データ最終頁上部の数字は「符号」として想定されていない
電子判決書等に基づく強制執行で、債務名義等の記録事項証明書の提出を省略するために提供する「事件特定情報」について、次の一文が追加されました。
※ 判決書データの最終頁上部に付された数字が「符号」として提供されることは想定していません。
同じ頁は、事件特定情報の一つである「符号」について、改正民執法18条の2各号に掲げるもの(個々の裁判・処分等)を識別するために裁判所が付したもので、執行機関が確認するファイルの特定に足りる情報の提供を要するとし、例として「『判決』等の表題、判決等の年月日、当事者の氏名」を挙げています。同頁の運用イメージでは、原則は申立書頭書のチェックボックスにチェックして申立書(目録)の記載を引用する方法、複数の債務名義に基づく申立てや執行文・更正決定が複数発付されている場合などは事件特定情報提供書面を提出する方法、とされています(事件特定情報提供書面の書き方)。
事務所の手順書で直すところ
- 訴え提起:関連付けを確認したら、裁判所の連絡を待たずに証拠・証拠説明書をアップロードする工程を入れる
- アカウント登録:新たに登録する弁護士は、会員専用サイトの士業者アカウント登録フォームから届け出る。事務員の補助者アカウントは、士業者が補助者アカウント登録フォームから届け出る。裁判所ウェブサイトの一般個人等用フォームは使わない
- 補助者アカウント:士業者アカウントとの紐づけ完了を確認するまで、電子申立て等に使わない
- 当事者の入力:法人番号は国税庁法人番号公表サイトで13桁を確認する。外国籍の当事者は、片仮名のフリガナに括弧書きでアルファベット表記を併記することを検討する
- 手数料:納付義務者として選択された者とその補助者が、納付情報の通知メールを確認する
- 被告側の受任:招待キーは弁護士本人が入力する
- 強制執行:「符号」として提供するのは、例えば判決等の表題・年月日・当事者の氏名。判決書データ最終頁上部の数字を提供することは想定されていない
最新版の確認方法と改訂履歴
手引は、裁判所ウェブサイト「改正民訴法等に関する参考資料」に掲載されています。同ページには更新日と更新事項が示され、本体のPDFとは別に、変更箇所に黄色のマーカーを付けたファイルも公開されています。手元の版が最新かどうかは、表紙左上の「R8.10.2」の表記と、48頁・49頁の修正履歴で確認できます。
| 改訂日 | 主な修正事項 |
|---|---|
| 令和7年11月26日 | 法廷等用機器説明動画のリンク追加、準備書面のファイル名の整理、証拠番号欄とファイル名の半角英数字を明記 |
| 令和8年2月27日 | 各種書式のリンク追加、本人確認資料の確定、共同受任の入力方法の整理、「証拠説明書作成の例」(27頁)、訴訟移行・併合・反訴等の新旧適用関係(43頁・44頁)、障害時の対応(46頁・47頁)を新規追加 |
| 令和8年3月27日 | 不動産事件の登記事項証明書の添付省略(12頁)、誤アップロード対応のリンク(22頁)、登記手続を要する電子判決書等の取扱い(35頁) |
| 令和8年4月24日 | 債務名義による登記申請の留意事項のリンク追加(35頁) |
| 令和8年5月15日 | 「関連付け解除」の頁を新規追加(36頁)、事件特定情報による強制執行申立ての運用イメージ(37頁・38頁) |
| 令和8年6月19日 | 施行に伴う時点修正、当事者多数の入力上の留意事項(12頁)、マスキングの留意点(39頁)、提出場所の対応関係の一部修正(40頁・41頁) |
| 令和8年10月2日 | 本記事の7項目(3頁・8頁・9頁・12頁・16頁・20頁・38頁) |
令和8年10月2日版は全49頁で、今回の修正事項に頁の追加や削除の記載はありません。本記事は令和8年10月5日時点の公開資料に基づいています。
よくある質問
「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」の最新版はいつのものですか?
令和8年10月2日更新の版です(全49頁)。裁判所ウェブサイトの「改正民訴法等に関する参考資料」に掲載されており、表紙の「R8.10.2」の表記と48頁・49頁の修正履歴で確認できます。変更箇所に黄色のマーカーを付けたファイルも併せて公開されています。
令和8年10月2日版では何が変わりましたか?
変更は7項目です。関連付け後に速やかにデータをアップロードする必要がある旨(3頁)、アカウント登録の申出の記載修正と登録ガイドのリンク(8頁)、補助者アカウントの注意書き(9頁)、法人番号・外国籍の当事者・PDFファイルの留意事項(12頁)、手数料の納付情報の通知に関する記載(16頁)、招待キーの入力の注意書き(20頁)、事件特定情報の「符号」に関する記載(38頁)です。
訴状を提出した後、証拠はいつアップロードすればよいですか?
事件が立件され、原告訴訟代理人が事件情報に関連付けられた後に、記録一覧画面からアップロードします。令和8年10月2日版の準備の手引には、関連付けされたら裁判所からの連絡がなくとも速やかにアップロードする必要があると追記されました(3頁・12頁)。
問題は「改訂に気づかないまま、古い前提で動き続ける」こと
準備の手引の改訂は、裁判所ウェブサイトの掲載ページを自分で見に行かなければ気づきにくいものです。しかも今回の7項目には、古い前提のままでも手続が途中まで進んでしまうものが含まれています。補助者が招待キーを入力すれば、補助者が事件情報に関連付けられることになります。証拠のアップロードは、裁判所からの連絡を待っている間は進みません。改訂内容を事務所の手順書とチェックリストに反映し、担当者が変わっても同じ動きができる状態にしておく必要があります。
AILEXなら提出物と期限を事件ごとに管理できる
AILEX(エーアイレックス)のmints提出管理は、提出(当方から裁判所へ)と受領(裁判所・相手方から当方へ)を事件ごとに一覧にし、期限・状態・要修正の件数を管理して、期限を過ぎたものを目立たせます。訴え提起後の証拠アップロードのように、裁判所からの連絡を待たずに自分で進める工程も、提出物として登録しておけば、期限と状態を一覧で確認できます。号証の振り方や証拠説明書の下書き、号証番号のスタンプとファイル名の整形をまとめた提出パッケージの作成にも対応しています。いずれも下書きと準備の支援であり、mintsへのアップロードと最終確認は弁護士が行います。画面と手順はmints提出の準備(AILEXの機能)でご覧いただけます。手引の改訂を運用に落とし込むために、AILEXを無料でお試しください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社(エーアイレックス)|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら