書類提出

mintsで訴訟提起する方法|訴え提起の効力発生時期・時効の完成猶予・手数料未納の却下リスク

mints(ミンツ)での訴訟提起は、令和8年5月21日の改正民事訴訟法全面施行により、委任を受けた訴訟代理人にとって「選べる方法」から「唯一の方法」になりました(民訴法132条の11第1項)。本記事は新規申立てフォームの画面操作そのものではなく(画面順の手順はmints新規申立ての手順を参照)、訴訟提起を法律上の行為として見たときに弁護士が押さえるべき4点──①訴えは「いつ」提起されたことになるのか、②消滅時効・出訴期間との関係、③手数料未納で訴状が却下される仕組み、④mintsで提出できないときの例外事由──を、最高裁「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(令和8年6月19日版)と条文に沿って整理します。

mintsでの訴訟提起の全体フロー

準備の手引3頁「mintsを利用した手続の全体図」に沿うと、原告代理人が行う訴訟提起は次の順序で進みます。

  1. mintsにサインイン(メールアドレス=当事者等識別符号、パスワード=暗証符号)
  2. 新規申立一覧画面から新規申立てフォーム(申立種別「訴えの提起」)を開き、当事者・代理人情報、申立内容(訴額・手数料概算)、申立ての趣旨(400字以内)・理由(10,000字以内)を入力する。趣旨・理由はフォームに直接入力する代わりに、PDFを「添付書類」に添付して提出することもできる
  3. 訴訟委任状、法人の資格証明書、訴え提起と同時に行う秘匿決定・訴訟救助・特別代理人選任・公示送達などの申立書を「添付書類」にアップロードする(準備の手引40頁)
  4. 参考事項欄に、被告側の代理人となる見込みのある弁護士等の情報を届け出る(改正民訴規則55条の2。相手方代理人情報の届出
  5. 「提出」ボタンを押すことで訴えの提起が完了する
  6. 裁判所が令和8年(ワ)第○号事件として立件し、mints上の事件情報に原告代理人を関連付ける
  7. 関連付け後、記録一覧画面から証拠説明書・書証の画像情報等(PDF・MP4・MP3・JPEG・PNG)をアップロードする。証拠は訴え提起の時点ではなく、立件後に提出するのがmintsの設計です(準備の手引12頁)
  8. 裁判所が納付情報を登録すると登録メールアドレスに通知が届く。手数料納付情報一覧で「手数料」「納付期限」「納付番号」「収納機関番号」「確認番号」を確認し、ATMまたはインターネットバンキングからペイジーで納付し、「納付日」の反映で完了を確認する(準備の手引16頁)
  9. 被告に代理人が就く見込みがないと裁判所が判断した時点で、送達用の出力書面の提出を求められる(改正民訴規則58条1項。出力書面の作成手順

フォームの入力内容そのものはmints訴状の電子申立てフォーム入力ガイドで、訴状提出から答弁書までの当事者双方の動きは訴状提出から答弁書提出までの全フローで解説しています。

訴えは「いつ」提起されたことになるのか──ファイル記録時の到達みなし

紙の時代は、裁判所の窓口に訴状を出して受付印を受けた時が訴え提起の時点でした。mintsではこの時点が条文で明確に定められています。

  • 民訴法132条の10第3項:電子情報処理組織を使用する申立て等は、当該申立て等に係る事項がファイルに記録された時に、当該裁判所に到達したものとみなす
  • 同条2項:電子申立ては、書面等をもってされたものとみなして法令の規定を適用する(=訴状を裁判所に提出する方式を定めた民訴法134条1項の「提出」に当たる)

つまり、訴えの提起の時点は「提出」ボタンを押して裁判所のファイルに記録された時であり、書記官が立件作業を終えて事件番号を付した時ではありません。窓口の受付時間にも左右されません。mintsは原則として24時間365日利用でき、利用できないのは毎月最終土曜日午前2時から午前10時までの定期メンテナンス時間帯で、臨時メンテナンスは実施の1週間前までにトップページで告知されます(mints FAQ Q10、令和7年10月24日版。定期メンテナンスの詳細)。

逆にいえば、「提出」を押したつもりでファイル要件エラー等により記録されていなければ、訴えは提起されていません。提出後は画面表示と通知メールで提出が完了していることを必ず確認してください。ファイル要件はmints PDF要件チェックリストにまとめています。

消滅時効・出訴期間との関係

訴訟提起の時点がなぜ重要かといえば、時効と期間遵守の基準時だからです。

  • 民法147条1項1号:裁判上の請求があると、その事由が終了するまで時効は完成しない(確定判決等で権利が確定することなく終了した場合は、終了の時から6か月を経過するまで)
  • 民訴法147条:訴えが提起されたときは、その時に、時効の完成猶予又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求があったものとする

この2つと132条の10第3項を組み合わせると、mintsでは、訴状データが裁判所のファイルに記録された時点で時効の完成猶予の効力が生じることになります。出訴期間が法定されている訴え(株主総会決議取消しの訴え、行政処分の取消訴訟など)の「法律上の期間の遵守」も同じ基準時です。

理屈のうえでは時効完成日の深夜に提出しても記録されれば間に合いますが、準備の手引11頁は「時効成立直前や控訴期間満了直前等、速やかに申立て等をする必要がある場合」を、まさに電子申立てができなくなったときに代替手段を尽くさなければならない場面の例として挙げています。回線やPCの不調、ファイル要件エラーによる再アップロードといったリスクは代理人側が負うため、期限日当日の提出は避け、提出できる状態になった時点で提出するのが唯一の安全策です。

手数料を納付しないとどうなるか──民訴法137条の2

令和8年5月21日以降、申立手数料は郵便費用と一本化され、ペイジーによる現金納付が原則です(改正民事訴訟費用等に関する法律8条1項、同規則4条の2第1項1号)。やむを得ない事由がある場合を除き、収入印紙を裁判所に提出しても手数料の納付とは認められません(準備の手引15頁)。手数料額の目安は訴訟手数料一本化の早見表を参照してください。

納付がない場合の手続は、令和4年改正で新設された民訴法137条の2が定めています。

段階内容根拠
納付命令裁判所書記官が相当の期間を定め、その期間内に手数料を納付すべきことを命ずる処分をする。処分は相当と認める方法で告知した時に効力を生じる137条の2第1項・2項
異議処分の告知を受けた日から1週間の不変期間内に異議を申し立てることができ、異議には執行停止の効力がある同条3項・4項
訴状却下命じられた手数料を納付しないときは、裁判長は命令で訴状を却下しなければならない同条6項
即時抗告却下命令には即時抗告ができるが、抗告人が相当と認める訴額に応じた手数料を納付しないときは原裁判所が抗告を却下する同条7項〜9項

mints特有の落とし穴は2つあります。第一に、フォームの訴額は「万円」単位で切り上げて入力する仕様で、100万5000円なら「101万円」と入力しなければなりません(準備の手引12頁)。円単位で入力すると手数料概算が崩れます。第二に、正確な手数料額はフォームの概算ではなく、訴状提出後に裁判所が登録する納付情報で確定し、そこに納付期限が付されます。期限を過ぎた場合の扱いはペイジー納付期限を過ぎたら訴状却下?で詳しく整理しています。なお、記載事項の不備(民訴法134条2項)に対する補正命令と却下(137条)は手数料とは別の手続です(書面の訂正・補正手続き)。

mintsで提出できないときの例外事由──132条の11第3項

電子申立て義務があるのに書面で訴えを提起すると、原則としてその訴えは不適法です(準備の手引10頁。紙で提出したら却下?)。例外は、「裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができない場合」(民訴法132条の11第3項)に限られ、例外事由があることは書面で提出しようとする代理人側が主張立証しなければなりません。書面の訴状には、例外事由がある旨とその具体的内容を記載した書面を添付する必要があります(改正民訴規則52条の14)。

原因例外事由の判断(準備の手引10〜11頁)
裁判所側のシステム障害肯定。公知の事実に当たり、特段の立証は不要
大規模な通信障害肯定されうるが、①通信事業者に障害が発生したこと、②自分がその事業者を利用していること(陳述書等)の立証が必要
代理人自身のPC・周辺機器の故障原則否定。他の端末・他の回線、スマートフォンのテザリング、裁判所設置端末(開庁時間中のみ、訴状データを入れたUSBメモリを持参)などの代替手段を尽くすことが求められる

代替手段を尽くしても提出できなかった場合は、サインインできない画面の動画・スクリーンショット、代替手段を試みた経過を記した陳述書などで裏付けることで例外事由が認められる余地があります。障害が確認できた場合でも、時効完成や控訴期間満了が迫っていなければ復旧を待って電子申立てをすることが想定されており、書面で申し立てる場合は被告への送達のために訴状副本や書証の写しも併せて提出します(準備の手引46頁)。手数料は復旧後にペイジーで納付することもできるため、裁判所の指示を待つのが無難です。障害時の具体的な動き方はシステム障害時の対応フロー紙提出が許される3つの例外にまとめています。

問題は「提起の瞬間」が事務所内で管理されていないこと

紙の訴状は、窓口の受付印が「提起」「印紙納付」「証拠提出」を一度に確定させていました。mintsではこれが分解されます。訴えの提起はファイル記録時、手数料の納付期限は後日届く納付情報で確定、証拠は立件・関連付け後に別途アップロード、出力書面は裁判所の求めに応じて提出──と、時点と担当が分散するのです。その結果、時効完成日当日の提出に賭けてしまう、納付情報のメールを見落として納付期限を過ぎる、訴額の万円単位を誤って手数料不足になる、立件後の証拠アップロードを忘れる、といったミスが起きやすくなっています。訴額計算から提出、納付、証拠提出までを一つの事件として一元管理する仕組みが必要です。

AILEXなら訴額計算から提出期限・納付期限まで一つの事件で管理できる

AILEX(エーアイレックス)の裁判手数料計算ツールは、訴額と審級を入力するだけで民事訴訟費用等に関する法律に基づく手数料を算出し、mintsフォーム入力テキスト生成は訴状の内容から「申立ての趣旨」(400字以内)と「請求の原因」(10,000字以内)を文字数カウント付きで生成して、そのままフォームに貼り付けられます。AI提出前チェック(8項目)は当事者名の表記揺れや日付・金額の矛盾を提出前に検出し、提出期限リマインダーとAIスケジュール管理は時効完成日・納付期限・証拠提出期限を事件単位で管理して3日前に通知します。提出ステータス管理で、どの事件が提出済みでどれが未提出かも一覧で把握できます。AILEXはmintsのAPIを利用するものではなく、mintsへのアップロードは弁護士自身が行う設計です。「提起の瞬間」を事務所の仕組みで管理するために、AILEXを無料でお試しください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社(エーアイレックス)|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら

よくある質問

mintsで訴えを提起した場合、訴えの提起はいつの時点になりますか?

民訴法132条の10第3項により、電子申立ては申立てに係る事項が裁判所のファイルに記録された時に裁判所に到達したものとみなされます。新規申立てフォームで「提出」ボタンを押してファイルに記録された時点が訴え提起の時点であり、裁判所が事件番号を付して立件した時点ではありません。

時効完成日の当日にmintsで提出しても間に合いますか?

民訴法147条により訴えが提起された時に時効の完成猶予の効力が生じるため、当日中にファイルに記録されれば理屈のうえでは間に合います。ただし、mintsは毎月最終土曜日午前2時から10時までの定期メンテナンス時間帯には利用できず、回線やPCの不調、ファイル要件エラーのリスクは代理人側が負います。準備の手引は時効成立直前を代替手段を尽くすべき場面の例として挙げており、期限日当日の提出は避けるべきです。

手数料をペイジーで納付しないと訴状はどうなりますか?

民訴法137条の2により、裁判所書記官が相当の期間を定めて納付を命ずる処分をし、それでも納付しないときは裁判長が命令で訴状を却下します。処分には告知から1週間以内に異議を申し立てることができます。収入印紙を裁判所に提出しても、やむを得ない事由がある場合を除き納付とは認められません。

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