AIと弁護士法第72条 ─ 法務省ガイドライン(2023年・2026年)の要点
要点(2026年10月25日時点):法務省は、AI 等を用いた法務支援サービスと弁護士法第72条の関係について、2023年8月と2026年8月21日にガイドラインを公表しています。弁護士・弁護士法人がサービスの提供を受け、出力を自ら精査・修正して使う場合は、直ちに同条に抵触するものではないと整理されています。いずれのガイドラインも、最終的な判断は個別の事実に基づいて裁判所が行うとしています。
弁護士法第72条の内容
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(弁護士法 第72条)
AI を使ったサービスとの関係では、主に次の三つが問題になります。
- 報酬を得る目的があるか
- 「その他一般の法律事件」に関するものか(いわゆる事件性)
- 鑑定(法律上の見解を述べること)その他の法律事務を取り扱うものか
法務省の 2 つのガイドライン
| 公表 | 名称 | 対象と位置づけ |
|---|---|---|
| 2023年8月 | AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について | 契約書等の作成・審査・管理を支援するサービス。基本的な解釈を示す |
| 2026年8月21日 | ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について | 事業者向けの AI 等法務業務支援サービス(汎用型 AI の提供者を含む)。2023年版を補完・拡充するもので、基本的な解釈は変えないとしている |
2026年のガイドラインは、2023年のガイドラインと併せて参照するものとされています。どちらも法務省大臣官房司法法制部の名義です。
2023年ガイドラインの整理
報酬を得る目的
報酬には現金のほか物品や供応も含まれ、額の多少や第三者からの受領かどうかを問いません。利用料などの利益を一切受けずに提供する場合は、通常は当たらないとされています。ただし、外形上は無償でも、他の有償サービスへの誘導などで実質的な対価関係が認められれば、当たり得るとされています。
事件性
契約の目的、当事者の関係、経緯などから個別に判断されます。紛争が生じた後に裁判外で和解契約を結ぶための契約書の作成は当たり得る一方、親子会社間の慣行となっている取引や、基本契約に基づく従前どおりの取引の契約は、通常は当たりにくいとされています。
鑑定その他の法律事務
サービスの具体的な機能と、利用者への表示の内容から判断されます。
| 機能 | 当たり得るもの | 通常は当たらないもの |
|---|---|---|
| 作成の支援 | 自由な入力に応じて個別の事情を法的に処理し、具体的な契約書を表示する(選択肢が極めて細かく、実質的に自由な入力と認められる場合を含む) | 定型の入力や選択により、ひな形を選び、差し込むにとどまる |
| 審査の支援 | 個別の事案に応じた法的リスクの有無・程度や、個別の修正案を表示する | ひな形やチェックリストとの文言の比較、一般的な条項例や解説の表示にとどまる |
| 管理の支援 | 管理している契約書について、個別の事案に応じた法的リスクや対応の要否を随時表示する | 当事者・期日などによる分類と表示、登録した留意事項の表示にとどまる |
生成AIを使ったサービスも、原則として同じ枠組みで判断するとされています。
2026年ガイドラインで加わった視点
- 行為の主体:利用者がプロンプトを入力して使うのが基本です。ただし、法的な助言などを行う機能が組み込まれ、提供者が主体的・継続的に提供している場合は、利用者の操作も提供者の行為と評価され得るとされています。
- 価値中立的なサービス:設計・機能の上で、事件性のある案件での利用を前提としないサービスは、利用者が自律的に使うだけで提供者が法律事務の取扱いの主体とされることは困難とされています。ただし、事件性のある利用を現に認識・容認して提供した場合などは別です。
- 分かれ目:まず、設計・機能の上で価値中立的といえるか、つまり紛議のある案件での利用を目指しておらず、そうした案件に特化した特性・機能も備えていないかが問われます。注意・警告の表示や弁護士への相談の案内などのガバナンスの措置は、これを補うもので、設計・機能が価値中立的でない場合に、措置だけで価値中立性が認められるわけではないとされています。
- 一般的な業務支援:紛議のある案件での利用を目指さず、特化した機能も持たないことを前提に、リサーチ、書面の作成・審査、社内のガバナンス、内部調査の支援などは、価値中立的なサービスといい得るとされています。
- 違反のおそれがある例:紛議のある案件の処理を目指して設計されたサービスや、弁護士の関与なしに訴状・準備書面・答弁書などを作る機能に特化したサービスなどが挙げられています。
- ガバナンスの推奨事項:関連法令と政府の指針(AI事業者ガイドラインなど)への対応、日本国内の問合せ・インシデント対応の窓口、弁護士の実質的な関与による品質の確保、出力の根拠の明示、誤認を与える表現の回避、利用者の属性・目的の確認、利用規約とディスクレーマー、重大な規約違反時の利用停止などが挙げられています。
弁護士が使う場合
2023年のガイドラインは、要件に当たる場合でも、通常は同条に違反しない場合として次の二つを挙げています。
- 弁護士又は弁護士法人に提供し、その弁護士が利用の結果を踏まえて契約書等を自ら精査し、必要に応じて修正する形で使う場合
- 弁護士・弁護士法人以外に提供し、提供先が当事者となっている契約について、提供先の職員・使用人又は役員である弁護士が、1 と同じ方法で使う場合
2026年のガイドラインも、弁護士・弁護士法人が自らサービスを開発・提供し、出力を弁護士の名義と責任で判断する場合(弁護士提供モデル)と、弁護士・弁護士法人に提供し、その弁護士が自ら精査・修正して使う場合(弁護士利用モデル)は、直ちに同条に抵触するものではないとしています。そのうえで、現状の AI のリスクを踏まえた適切なガバナンスの構築が期待されるとしています。
事務所がサービスを選ぶときの確認点
- 弁護士・法律事務所に提供されるサービスか、一般の方や企業に直接提供されるサービスか
- 出力が下書き・参考情報として位置づけられ、確定と外部への行為が弁護士の操作になっているか
- 出力に根拠(参照した文書・条文・判例)が示されるか
- 利用規約とディスクレーマーで、法律事務の取扱いを行わない旨と利用の範囲が明示されているか
- 日本国内の問合せ窓口があるか
- 守秘義務・個人情報の観点(生成AIサービスを選ぶ 8 つの確認点)
AILEX の位置づけ
AILEX は、弁護士・法律事務所に提供する AI リーガル OS です。AI の出力は下書き・参考情報として扱い、法的評価の確定と、依頼者・相手方・裁判所への送付・提出は弁護士の操作として行う設計です。当社は、この構成をガイドラインの「弁護士利用モデル」の形に沿うものと整理しています。
- 書面は「作成 → 照合 → 修正 → 確定」の順に進み、確定は弁護士が行います(書面の作成と品質検査)。
- 契約書チェックの指摘と修正案は下書きで、リスクの評価と文言の決定は弁護士が行います(契約書チェック)。
- 依頼者・相手方に出す文面は、弁護士が確かめてから、弁護士がご自身で送ります。
- 各条文と機能・利用契約の対応は、弁護士法・日弁連規程との対応で公開しています。
この整理は当社の見解であり、法務省やその他の機関の確認を受けたものではありません。最終的な判断は、個別の事実に基づき裁判所が行います。
よくあるご質問
Q.01AIで契約書をチェックすることは、非弁行為に当たりますか?
Q.02無料の AI サービスなら、弁護士法第72条の問題にはならないのですか?
Q.03汎用の生成AI(チャット型の AI)の提供者も対象ですか?
Q.04企業の法務部が AI のサービスを使う場合はどうなりますか?
Q.05最終的に、誰が判断するのですか?
出典(2026年10月25日確認)
- 弁護士法(e-Gov 法令検索)
- 法務省「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(2023年8月、PDF)
- 法務省「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」(2026年8月21日、PDF)
- 法務省「弁護士法(その他)」(ガイドラインの掲載ページ)
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」
関連ページ
ご注意:本ページは一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事案への当てはめや、守秘義務・個人情報保護法・弁護士法等への適合は、各事務所の業務と運用に照らして各事務所でご判断ください。記載は 2026年10月25日時点で確認した公表資料に基づきます。法令・ガイドライン・各サービスの規約は変更されることがあります。AILEX の AI 機能による出力は参考情報・ドラフトであり、内容の確認と最終的な判断は弁護士ご自身が行ってください。AILEX は、法律事件に関する鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を行うものではありません(弁護士法第72条)。当社の顧問弁護士事務所は弁護士法人えそらです(本ページの監修を意味するものではありません)。
公開日:2026年10月25日 最終更新日:2026年10月25日 編集:AILEX合同会社
