電子送達

電子判決書とは|いつから・送達方法・控訴期間の起算点・登記や執行での使い方(民訴法252条)

電子判決書(でんしはんけつしょ)とは、裁判所が判決の言渡しをするときに作成する、主文・事実・理由などを記録した電磁的記録です(民訴法252条1項)。令和8年5月21日の改正民事訴訟法全面施行後に提起された事件では、判決は紙の判決書ではなく電子判決書に基づいて言い渡され、mints(ミンツ)を利用する訴訟代理人には電子判決書がシステム送達されます。本記事では、電子判決書の法的根拠、送達の方法、控訴期間がいつから進むのか、そして登記申請や強制執行で使うときの注意点を、条文と最高裁「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」(令和8年6月19日版)に沿って整理します。

電子判決書の法的根拠と記録事項(民訴法252条・253条)

改正民訴法252条1項は、裁判所が判決の言渡しをするときは、次の事項を記録した電磁的記録(電子判決書)を作成しなければならないと定めています。

  • 主文
  • 事実(請求を明らかにし、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示する。同条2項)
  • 理由
  • 口頭弁論の終結の日
  • 当事者及び法定代理人
  • 裁判所

判決の言渡しはこの電子判決書に基づいてし、言渡し後、裁判所は電子判決書をファイルに記録します(253条)。被告が請求原因事実を争わず何らの防御方法も提出しない場合や、公示送達による呼出しを受けて出頭しない場合の認容判決は、電子判決書に基づかずに言い渡し、当事者・主文・請求・理由の要旨を口頭弁論期日の電子調書に記録することができます(254条。いわゆる調書判決の電子版)。電子決定書・電子命令書も、告知後速やかにmintsにアップロードされシステム送達されます(準備の手引35頁)。

項目紙の判決書(旧法事件)電子判決書(新法事件)
作成・記録裁判官が判決書原本を作成電磁的記録として作成し、言渡し後にファイルに記録(252条・253条)
当事者への送達判決書正本の送達書記官が同一性を証明した書面の送達、またはシステム送達(255条2項)
訴訟代理人への送達郵送等mintsへのアップロードとシステム送達(準備の手引35頁)
控訴期間の起算正本を受領した日から閲覧・ダウンロード・通知から1週間のいずれか早い時から(109条の3、285条)

いつから電子判決書になるのか

電子判決書の規定は改正民訴法の全面施行日である令和8年5月21日から適用され、同日以降に提起された事件(新法事件)で判決が言い渡されるときは電子判決書になります。令和8年5月20日以前に提起された事件(旧法事件)は従前どおり紙の判決書が作成・送達され、旧法事件の控訴も紙の手続のままです(改正前・改正後事件の見分け方施行前事件の控訴は紙提出)。事務所内で旧法事件と新法事件が混在している間は、「この事件の判決は電子判決書か紙か」を事件台帳で区別しておく必要があります。

電子判決書はどう送達されるか(民訴法255条)

電子判決書は当事者に送達しなければならず(255条1項)、その方法は次のいずれかです(同条2項)。

  1. 電子判決書に記録された事項を記載した書面であって、裁判所書記官がその内容が電子判決書の記録と同一であることを証明したものの送達(出力書面による送達)
  2. 民訴法109条の2による送達(システム送達)

本人訴訟の当事者など、システム送達を受ける旨の届出をしていない者には出力書面が送達されます。これに対し、委任を受けた訴訟代理人は電子申立て等が義務付けられる者として、届出をしていない場合でもシステム送達を受けることができ、その場合には通知を発することも要しないとされています(109条の4)。準備の手引35頁は、裁判所は電子判決書に基づいて判決を言い渡した後、速やかに電子判決書をmintsにアップロードしてシステム送達をしなければならないと整理しています(改正民訴法253条、改正民訴規則157条3項)。

控訴期間はいつから進むか──109条の3と285条

控訴は、電子判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければなりません(285条)。そして、システム送達の効力は次のいずれか早い時に生じます(109条の3第1項)。

  • ①送達を受けるべき者が電子判決書を閲覧した時
  • ②送達を受けるべき者が電子判決書を自分のPC等のファイルに記録(ダウンロード)した時
  • ③閲覧・ダウンロードができる措置がとられた旨の通知が発せられた日から1週間を経過した時

例えば、9月10日(木)にmintsで電子判決書を閲覧すれば、送達はその日に効力を生じ、控訴期間は翌11日から起算して(民訴法95条1項、民法140条)9月24日(木)に満了します。閲覧もダウンロードもしなくても、通知の発出日から1週間で③により送達の効力が生じ、そこから2週間が進みます。送達を受けるべき者の責めに帰することができない事由によって閲覧・記録ができない期間は③の1週間に算入されません(109条の3第2項)が、海外出張中でmintsにアクセスできない場合などは、事前に受訴裁判所に出力書面による送達を申し出るか、別の送達受取人を届け出ることが準備の手引19頁で勧められています(海外アクセス不可時の対応)。

実務上とくに注意すべき点は3つです。

  • 補助者(事務員)の閲覧・ダウンロードでも送達の効力が生じる(準備の手引35頁)。事務員が「先に確認しておこう」と開いた瞬間に控訴期間が走ります(補助者の閲覧で控訴期間開始補助者の閲覧と送達の関係
  • mintsには控訴期間の末日を表示する仕様がないため、従来どおり代理人が自ら計算・管理する必要がある(同頁)
  • 閲覧・ダウンロードの状況は記録一覧画面の閲覧複写状況で確認できるので、「いつ送達の効力が生じたか」は自分で確認できる(同頁)。1週間ルール全体の考え方は電子送達の1週間ルール、みなし送達の管理術はみなし送達に注意を参照

判決確定後にやること──ダウンロード・登記・執行

ダウンロード:事件情報とアカウントの関連付けは、判決確定日等と、書記官が最後に電磁的記録をアップロードした日から1週間が経過した日のいずれか遅い日以降に解除されます。控訴が提起されると控訴審に事件情報が移管されるため、確定日を待たずに関連付けが解除されることがあり、準備の手引36頁は判決後速やかにダウンロードしておくことを勧めています(和解調書・判決書のダウンロード事件終局後のデータ保存)。裁判所側の記録としての保存期間は訴訟記録の保存期間・廃棄で整理しています。

登記申請:所有権移転登記手続を命じる主文など、登記手続を要する電子判決書は訴訟代理人にシステム送達されますが、送達されたデータだけでは法務局に登記申請できません。フェーズ3後は、記録外領域に、内容が裁判所のファイルの記録と同一である旨の証明文言と電子署名が付された電子判決書が別途アップロードされるので、アップロードから1週間程度を目安にダウンロードしてオンライン登記申請に使います(準備の手引35頁。電子判決書で登記申請するには)。

強制執行:強制執行の申立ては書面で行いますが、債務名義である電子判決書の記録事項証明書の提出は、事件特定情報(改正民執規則15条の2)の提供で代えることができます(改正民執法18条の2)。執行文付与の申立ては訴訟代理人に電子申立て義務があり、電子執行文は電子判決書に併せて記録され、申立人に交付されません(準備の手引5頁。事件特定情報提供書面の書き方)。

問題は「送達の効力が自分の行動で早まる」こと

紙の判決書正本は、受け取った日が送達日で、受け取るまでは期間が進みませんでした。電子判決書は、誰かが閲覧した時、ダウンロードした時、通知から1週間のいずれか早い時に送達の効力が生じます。つまり、事務員の閲覧という自分側の行動で控訴期間の起算点が前倒しになるうえ、mintsは末日を表示せず、決定・命令の予定日も知らせません。判決の通知メールを他のmints通知に紛れて見落とせば、閲覧しないまま③の1週間が過ぎて期間が進みます(mints通知メールの仕分け)。複数代理人や補助者がいる事件では「誰の閲覧が最初か」を把握しなければ起算点が確定しません。送達の効力発生日を記録し、そこから控訴期間の末日を機械的に計算して共有する仕組みが不可欠です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社(エーアイレックス)|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら

よくある質問

電子判決書とは何ですか?

裁判所が判決の言渡しをするときに作成する電磁的記録で、主文・事実・理由・口頭弁論終結の日・当事者及び法定代理人・裁判所を記録します(民訴法252条1項)。判決の言渡しは電子判決書に基づいて行われ、言渡し後にファイルに記録されます(253条)。令和8年5月21日以降に提起された事件で作成され、旧法事件は従前どおり紙の判決書です。

電子判決書の控訴期間はいつから進みますか?

電子判決書の送達を受けた日から2週間です(民訴法285条)。システム送達の効力は、電子判決書を閲覧した時、ダウンロードした時、閲覧・ダウンロードができる旨の通知が発せられた日から1週間を経過した時のいずれか早い時に生じます(109条の3)。補助者アカウントの閲覧でも効力が生じ、mintsには控訴期間の末日を表示する機能がないため、代理人が自ら計算・管理する必要があります。

システム送達された電子判決書で登記申請や強制執行はできますか?

システム送達されたデータだけでは法務局への登記申請はできません。登記手続を要する電子判決書は、証明文言と電子署名が付されたものが記録外領域に別途アップロードされるので、これをダウンロードしてオンライン登記申請に使います。強制執行の申立ては書面で行いますが、記録事項証明書の提出は事件特定情報の提供で代えることができます(改正民執法18条の2)。

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