電子送達

電子判決書で登記申請・自動車登録・特許登録はどうする?記録事項証明の取得方法【フェーズ3後】

「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき、所有権移転登記手続をせよ」――勝訴判決を得た後、法務局で登記申請をする場面は、フェーズ3後に大きく変わりました。電子判決書の原本はデータであり、紙の「正本」は交付されません。mintsからダウンロードした電子判決書のデータだけでは登記申請ができず、「記録事項証明」が必要になります。本記事では、最高裁が公開した「フェーズ3後の債務名義による登記申請の留意事項」「自動車登録申請の留意事項」「特許権等の登録申請の留意事項」と「準備の手引」をもとに、記録事項証明の2つの形態、無料で受け取る方法とその期限、取り損ねた場合の申請方法、申請先ごとの違いを整理します。

フェーズ3後、判決書の「正本」はなくなった

改正民訴法の下では、裁判所は電子判決書に基づいて判決を言い渡し、速やかに電子判決書をmintsにアップロードしてシステム送達をします(民訴法253条、民訴規則157条3項)。訴訟代理人が受け取るのは「電子判決書等がアップロードされた旨の通知」であり、これまでの末尾に「これは正本である」との認証文言が付いた判決正本に相当するものは交付されません(民訴法255条2項2号、109条の2)。和解調書等の電子調書も同様です。

電子判決書の送達効力は、閲覧した時・ダウンロードした時・通知を発した日から1週間が経過した時のいずれか早い時点で生じ、そこから控訴期間が進行します(判決送達と控訴期間の解説)。

登記申請には「記録事項証明」が必要

最高裁の留意事項は明快です。システム送達を受けた電子判決書等のデータのみで登記申請をすることはできず、債務名義の記録事項証明――「本書面(電磁的記録)の内容が、裁判所のファイルに記録されている事項と同一であることを証明する」との文言があるもの――が必要になります。債務名義が判決の場合は、これとは別に判決の確定証明(書面または電磁的記録)も取得して提出する必要があります。

記録事項証明の2つの形態と、申請先ごとの使い分け

形態特徴使える場面
電磁的記録による記録事項証明電子判決書の末尾または冒頭に記録事項証明文言が記録され、裁判所書記官の電子署名が付されたデータ法務局へのオンライン登記申請、特許庁への登録申請
書面による記録事項証明(記録事項証明書)債務名義の末尾の認証用紙に記録事項証明文言が記載され、書記官の記名押印があるもの法務局の窓口・郵送申請、運輸支局等への自動車登録申請、特許庁への書面申請

ここで最大の落とし穴が、電磁的記録の記録事項証明を印刷した書面は使えないことです。印刷すると電子署名を確認できず、書記官の押印もないため、登記官は真正に成立したものと判断できません。法務局に窓口・郵送で申請する場合は、電磁的記録の記録事項証明を記録媒体で提出するか、書面による記録事項証明を取得して提出する必要があります。

申請先電磁的記録書面留意点
法務局(不動産登記等)オンライン申請で利用可窓口・郵送で利用可印刷物は不可。記録媒体での提出は可
運輸支局等(自動車登録)不可必須当面の間、書面の記録事項証明書を持参。ワンストップサービス(OSS)は利用不可
特許庁(特許権・実用新案権・意匠権・商標権の移転登録等)利用可利用可郵送・窓口で書面申請する場合は書面の記録事項証明が必要

取得方法①:システム送達時に「記録外」へ無料で提供される

電子判決書や和解調書等に登記手続を要する主文・和解条項が含まれているときは、裁判所が、システム送達とは別に、記録事項証明文言と電子署名の付いた電子判決書等をmintsの「記録外」画面にアップロードする方法で提供します。申請も手数料も不要です。準備の手引は、アップロードから1週間程度までを目安に速やかにダウンロードし、必要に応じて法務局のオンライン登記申請を行うことを想定しています(記録一覧と記録外の違いは記録一覧と記録外の使い分け)。

注意すべきは、このデータは事件情報と当事者アカウントの関連付けが解除される前にダウンロードしなければならないことです。準備の手引が示す解除時期の目安は次のとおりです。

終局事由関連付け解除の時期(目安)
判決判決の確定日(控訴があると控訴審への移管のため確定前に解除されることがある)
訴状却下・訴え却下却下命令・却下判決の確定日
和解和解調書をアップロードした日から1週間が経過した日
和解に代わる決定決定の確定日

実際には、上記の日と「書記官が最後に電磁的記録をアップロードした日から1週間が経過した日」のいずれか遅い日以降に解除されます。和解の場合は判決より早く解除され得るため、和解成立当日にダウンロードする運用が安全です(和解調書・判決書のダウンロード)。

取得方法②:ダウンロードし損ねたら「記録事項証明の交付(提供)申請」

関連付け解除前にダウンロードしなかった場合は、裁判所ウェブサイト掲載の「記録事項証明の交付(提供)申請書」により申請します(要手数料)。弁護士等の電子提出が義務付けられる者は書面で申請できないため、mintsの新規申立てフォームで「申立種別:その他」を選択して電子提出します。書面による記録事項証明が必要な場合も同じ申請書を用い、郵送交付を希望するときは宛先を記載した返送用封筒に郵便切手を貼付して提出します。

自動車登録の特則:書面が必須、1回だけ無料

自動車登録では電磁的記録の記録事項証明は使えないため、システム送達を受けた訴訟代理人は、電子判決書等に自動車登録手続を要する主文・和解条項が含まれているときに、第一審の裁判所の書記官に書面の記録事項証明の交付を希望する旨を伝えることで、1回に限り手数料なしで交付を受けられます。2回目以降は上記の交付申請(要手数料)によります。判決の確定証明書も別途申請が必要です。

相手方がmintsを利用していない場合

相手方当事者がmintsを利用していない本人訴訟等の場合、裁判所はその当事者に対して記録事項証明書を書面で送達します。書面で送達を受けた記録事項証明書は、そのまま登記申請・登録申請に使えます。もっとも、弁護士等はシステム送達を受ける立場ですので、自らの登記申請のためには上記①②の方法で記録事項証明を確保する必要があります。

問題は「ダウンロードの期限」と「印刷物の持ち込み」

フェーズ3後の登記実務で想定される失敗は、大きく2つです。ひとつは、判決や和解の後に記録外の証明データをダウンロードしないまま関連付けが解除され、有料の交付申請をやり直すこと。もうひとつは、電磁的記録の記録事項証明を印刷して法務局や運輸支局に持ち込み、受理されないことです。いずれも「判決言渡し・和解成立の当日にやることリスト」を持っていれば防げます。控訴期間の管理と同じタイミングで、記録事項証明のダウンロードと確定証明の申請を組み込んでおきましょう(事件終了後のデータ保存)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社(エーアイレックス)|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら

よくある質問

mintsからダウンロードした電子判決書で登記申請できますか?

できません。システム送達される電子判決書には記録事項証明文言がなく、正本に相当するものも交付されません。登記申請には、裁判所書記官の電子署名または記名押印が付いた記録事項証明と、判決の場合は確定証明が必要です。

記録事項証明は無料で受け取れますか?

登記手続を要する主文や和解条項がある場合、裁判所が電子署名付きの記録事項証明をmintsの「記録外」画面にアップロードして提供します。申請も手数料も不要ですが、事件情報とアカウントの関連付けが解除される前にダウンロードする必要があります。

電磁的記録の記録事項証明を印刷して法務局に持参してもよいですか?

受理されません。印刷すると電子署名を確認できず書記官の押印もないためです。窓口・郵送で申請する場合は、電磁的記録を記録媒体で提出するか、書面の記録事項証明を取得してください。自動車登録では書面の記録事項証明が必須です。

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