【徹底解説】mintsの次に来る「TreeeS」とは何か — 30億円超の開発遅延、二重移行問題、そしてAILEXの対応戦略


2026年5月21日の改正民事訴訟法全面施行まで、残り約3か月。弁護士の皆さまは、mintsの操作を覚え、アカウントを登録し、電子提出の準備を進めている最中かと思います。

しかし、もうひとつ知っておくべき重要な事実があります。

いま皆さまが習得しようとしている「mints」は、本来使われるはずのシステムではありません。

最高裁判所は当初、mintsに代わる次世代システム「TreeeS(ツリーズ)」を開発し、2026年5月の全面施行に合わせて投入する計画でした。しかし開発が深刻に遅延し、30億円超の予算を投じながらも完成が間に合わず、急遽mintsの改修で対応する方針に転換されました。

つまり弁護士には、紙 → mints → TreeeS という2回のシステム移行が待っています。

本記事では、TreeeSの全貌を徹底的に解説し、弁護士の皆さまが今から何を準備すべきか、そしてAILEXがこの「二重移行問題」にどう対応するかをお伝えします。


TreeeSとは何か — 3つのシステムを統合する次世代プラットフォーム

名称の由来と位置づけ

TreeeSは「Trial e-filing e-case management e-court Systems」の略称です。その名の通り、民事裁判IT化の「3つのe」を単一のシステム群として統合することを目指しています。

  • e提出(e-Filing): 裁判書類のオンライン提出(現在のmintsが担当)
  • e事件管理(e-Case Management): 訴訟記録の電子化と管理(RoootSが担当)
  • e法廷(e-Court): ウェブ会議による期日実施(現在はMicrosoft Teams)

現行のmintsは「e提出」の機能に特化したシステムですが、TreeeSはこれらすべてを統合し、弁護士にとっても裁判所にとっても一貫した操作体験を提供する構想でした。

RoootSとの関係

TreeeSを理解するには、もうひとつの裁判所システム「RoootS(ルーツ)」を知る必要があります。

RoootSは「e事件管理システム」として2024年7月にサービスインした、裁判所職員が使う内部システムです。事件の進行管理、期日の設定、訴訟記録の管理を電子的に行うためのものですが、弁護士が直接触れるシステムではありません。

TreeeSは、この RoootSとmintsを統合 し、弁護士の書類提出 → 裁判所の事件管理 → 法廷でのウェブ会議をシームレスに接続する設計でした。しかし、まさにこのRoootSとの連携部分が開発の最大の難所となりました。


なぜ開発が遅れたのか — 30億円超を投じた経緯

開発の時系列

TreeeSの開発は以下のスケジュールで進められてきました。

時期出来事
2020年度mints開発開始
2022年4月〜第1次開発:RoootS(e事件管理)開発
2023年4月〜第2次開発:TreeeS開発開始
2024年7月RoootSサービスイン
2024年10月TreeeS完成予定(当初計画)→ 間に合わず
2024年12月5日最高裁が日弁連に方針転換を通知
2025年2月TreeeS導入延期を正式決定
2025年7月2日第3次開発(家事事件デジタル化)公募公告
2025年8月末TreeeS基本機能完成目標(総合テスト中)
2025年10月25日mints改修版に新機能実装
2026年2月末TreeeS周辺機能完成目標(単体テスト中)
2026年5月21日改正民訴法全面施行(mints改修版で対応)
2027〜2028年度TreeeS本格導入(現在の見通し)

開発が難航した3つの理由

① RoootSとの連携が「高難度」

日弁連の報道によれば、裁判所職員向けのe事件管理システム(RoootS)との連携作業が極めて困難だったとされています。技術的に見ると、RoootSはマイクロサービスアーキテクチャを採用している一方、e提出・e記録管理システムは非マイクロサービス構成です。この設計の混在が統合の壁となったと考えられます。

② テスト段階での不具合頻発

報道によれば、テスト段階になって不具合が次々と発覚しました。裁判手続は法律で厳密に定められたプロセスであり、手続の順序、期限、送達の効力発生時期など、システムが正確に処理しなければならない要素が膨大です。一般的な業務システムとは異なり、法的正確性を100%担保しなければならないという司法固有の要件が開発を困難にしました。

③ 裁判実務の複雑性をシステムに落とし込む難しさ

民事訴訟の手続は、訴訟類型ごとに異なるルールがあり、裁判体ごとの運用の違いも存在します。こうした「紙と対面」を前提に長年積み上げられてきた実務の複雑性を、デジタルシステムとして再設計する作業は想定以上に大規模でした。

予算と開発ベンダー

TreeeSの開発予算は30億円超とされています。開発ベンダーは「東京都内の会社」に委託されたと報じられていますが、具体的な企業名は非公開です。最高裁は情報公開請求に対してもTreeeSの導入計画を不開示としており、司法府の情報公開のあり方自体が議論の対象となっています。

なお、既存のmintsの開発・改修はNTTデータが受注しており、政府調達情報で落札額が公開されています。


方針転換 — 2024年12月5日の「通知」が意味するもの

最高裁事務総局から日弁連への通知

2024年12月5日、最高裁判所事務総局は日弁連事務総長および日本司法書士会連合会に対し、重要な通知を発出しました。

その内容は、TreeeSでの施行を念頭に置きつつも、「民事訴訟手続についてすでに運用を開始しているmints(ミンツ)での施行も検討する」というものでした。

一見慎重な表現ですが、これは実質的にTreeeSの2026年5月投入を断念する宣言でした。

「次善の策」としてのmints改修版

TreeeSに代わり、既存のmintsを改修してフェーズ3に対応することが決定されました。改修の主な内容は以下の通りです。

2025年10月25日実装:

  • 新規申立て機能(訴状のオンライン提出)
  • 電子送達機能
  • 記録一覧機能(訴訟記録の閲覧・ダウンロード)
  • 電子納付機能(ペイジー)

2026年2月21日実装予定:

  • 電子納付機能の追加対応

これらの機能は本来TreeeSの標準機能として設計されていたものを、mintsに後付けで実装したものです。そのため、TreeeSが目指していた統合的な操作体験とは異なり、個別機能の追加という形にならざるを得ませんでした。


TreeeSとmintsの違い — 何が変わるのか

TreeeSが本格導入された際に、mints改修版から何が変わるのか。現時点で判明している主な差異を整理します。

訴訟記録の扱い

mints改修版: 弁護士がmintsで書類を提出 → 裁判所側では、これまでは提出書面を紙にプリントアウトして管理。フェーズ3からは記録一覧機能で電子閲覧が可能に。ただし、mintsとRoootSの連携は限定的。

TreeeS: e提出とe事件管理が統合。弁護士が提出した書類がそのまま電子事件記録として保管され、裁判所職員・相手方弁護士・当事者がそれぞれの権限に応じてアクセスできる一貫したデータフローを実現する設計。

対応する事件類型

mints改修版: 民事訴訟手続のみ。

TreeeS: 民事訴訟に加え、第3次開発(2028年3月まで)により家事事件手続・人事訴訟手続にも対応予定。離婚調停、相続紛争、成年後見など、弁護士の日常業務の大部分をカバーする範囲に拡大。

システム送達の実装レベル

mints改修版: フェーズ3対応として基本的な送達通知機能を実装。ただし、TreeeSが目指していた送達と事件管理の連動は限定的。

TreeeS: 送達情報がe事件管理と自動連携し、送達の効力発生時期(閲覧時・通知から1週間経過時のいずれか早い方)の追跡が統合的に行われる設計。

外部API連携

mints改修版: 外部APIは一切非公開。外部システムとのプログラム的な連携は不可能。

TreeeS: API公開に関する公式な計画は確認できません。しかし、RoootSの調達仕様書には「関連システムとの外部連携機能」の記載があり、裁判所内部のシステム間連携を前提とした設計は進められています。


「二重移行問題」— 弁護士が直面する現実

紙 → mints → TreeeS

弁護士にとって最も切実な問題は、短期間に2回のシステム移行を経験しなければならないという事実です。

第1の移行(2026年5月): 紙・FAX中心の業務フローから、mintsによる電子提出への移行。アカウント登録、操作の習得、事務所内のワークフロー変更が必要。

第2の移行(2027〜2028年度): mints改修版からTreeeSへの移行。新たな操作画面の習得、データの引き継ぎ、事務所内ワークフローの再変更が発生。

これは弁護士の65.5%がmintsすら使ったことがないという現状において、極めて大きな負担です。特にIT専任者を持たない1〜5名の小規模事務所(全法律事務所の80%以上)にとっては、2回のシステム変更に対応する余力がないというのが偽らざる実情ではないでしょうか。

データ移行の不透明さ

mints改修版で運用を開始した後、TreeeSに移行する際に既存のデータがどのように引き継がれるかについて、具体的な方針は公表されていません。提出済み書面、事件番号、認証情報などがシームレスに移行できるのか、それとも再登録が必要になるのかは、弁護士の実務に直接影響する重要事項ですが、現時点では不明です。


海外はどうなっているのか — 日本は10〜15年遅れ

裁判手続のデジタル化で先行する各国の状況を見ると、日本の遅れは顕著です。

韓国:2010年から全面電子化

韓国の電子訴訟システム(ECFS)は2010年に特許事件から運用を開始し、2015年までに刑事以外のほぼ全事件類型に拡大しました。金融機関・特許庁・郵便局・登記所との外部システム連携も実現しており、弁護士はワンストップで手続を完結できます。日本に対して約15年先行しています。

シンガポール:事件中心設計の革新

シンガポールのeLitigationは2013年に稼働し、「文書中心」から「事件中心」への設計転換を果たしました。国民デジタルID(SingPass)との統合による認証の簡素化が特徴で、提出書類の37%が営業時間外に提出されるという24時間利用の実績があります。弁護士には電子提出が義務化されており、紙での提出は原則として認められていません。

米国:API公開による民間エコシステム

米国のCM/ECF(Case Management/Electronic Case Files)は規模で圧倒しています。10億件超の検索可能文書、4,700万件超の事件、65万人超の弁護士ユーザー。最大の特徴はAPI公開にあり、カリフォルニア、テキサスなど複数の州でEFSP(Electronic Filing Service Provider)という民間企業がAPIを通じて裁判所への電子提出を代行するマーケットプレイスが成立しています。法律事務所は裁判所のシステムを直接操作することなく、使い慣れたソフトウェアから提出できるのです。

英国:£28億の教訓

英国のHMCTS改革プログラム(2016年開始)は、当初予算£16億が£28億に膨張し、完了も2022年から2025年に延期されました。技術的な問題が非効率を生んだ点は、TreeeSの開発遅延と通底する課題です。司法デジタル化は世界的に予算とスケジュールの超過が「常態」であり、日本だけの問題ではありません。

中国:AIを組み込んだスマートコート

中国のスマートコートは、年間1,143万件超のオンライン申立、AI自動文字起こし(裁判時間30%短縮)、類似判例推薦システムなど、AIを司法手続に積極的に組み込んでいます。2025年までに全裁判所でAI導入、2030年までに全司法プロセスでのAI運用を目標としています。


弁護士の皆さまに知っておいていただきたいこと

今すぐ必要なこと:mintsへの対応

TreeeSの遅延がどうであれ、2026年5月21日の電子提出義務化は動きません。まず最優先で取り組むべきは、mintsの準備です。

  • まだアカウント登録していない方: 日弁連からのハガキに従い、すぐに登録を完了してください。2025年10月時点で約64%しか登録していません。
  • 登録はしたが使ったことがない方: 裁判所が公開している操作説明動画(YouTube、3本構成)で操作を確認し、テスト環境で練習してください。
  • 事務所内のワークフロー: 書証のPDF化、証拠番号の付記、50MB制限への対応、ファイル名の命名規則など、事務所内のルールを今のうちに整備しておくことをお勧めします。

中期的に意識すべきこと:TreeeSへの備え

TreeeSの本格導入は2027〜2028年度と見込まれていますが、具体的な移行スケジュールは未公表です。現時点で弁護士側にできることは限られますが、以下の点を意識しておくことは有益です。

  • デジタルワークフローへの慣れ: mints運用そのものが、TreeeSへの最良の準備になります。電子提出に慣れること自体が、次のシステムへの適応力を高めます。
  • クラウドベースの業務管理: 紙の事件記録に依存した業務体制から、デジタルベースの管理体制への移行を少しずつ進めておくと、TreeeS導入時の混乱を減らせます。
  • 情報収集: 裁判所、日弁連、所属弁護士会からのTreeeSに関するアナウンスに注意を払ってください。移行スケジュールや操作研修の案内は、今後段階的に公表されるはずです。

AILEXは「二重移行」をどう吸収するか

裁判所システムの変更を吸収する中間レイヤー

AILEXは、mints対応を設計段階から「特定のシステムへの依存」ではなく「ワークフローの抽象化」として実装しています。

具体的に言えば、AILEXのmints提出パッケージ機能は、mintsのAPI(存在しません)に直接接続するのではなく、mints提出に必要なPDF生成・証拠番号付与・ファイル名規則準拠・50MB分割・フォーム入力テキスト生成を自動化するアプローチを取っています。

この設計思想が重要なのは、将来TreeeSに移行した際にも、出力フォーマットの調整だけで対応できるからです。弁護士の皆さまは、AILEXの操作画面はそのままに、裏側のシステムがmintsからTreeeSに変わっても同じワークフローで業務を続けられます。

AILEXが現在提供しているmints対応機能

施行日に向けて、AILEXは以下のmints対応機能を実装済みです。

AI証拠説明書自動生成: アップロードした書証PDFの内容をAIが読み取り、号証番号・標目・作成者・作成日・立証趣旨を自動生成します。

mintsフォーム入力テキストAI生成: 訴状の「申立ての趣旨」(400字以内)と「請求の原因」(10,000字以内)のフォーム入力用テキストを、事件情報からAIが自動生成します。

mints提出パッケージ自動生成: 事件に登録された書面・書証を、mintsのファイルフォーマット要件に準拠したZIPパッケージとして出力。証拠番号の右上付記、A4/A3サイズ準拠、ファイル名50文字以内の命名規則を自動で適用します。

50MBファイル自動分割: mintsの1回のアップロード容量上限(50MB)を超える書証を、自動的に分割します。

受領書PDF生成: mintsでのアップロード確認後に必要となる受領書をPDFで自動生成します。

送達管理・期限トラッカー: 電子送達の「1週間ルール」(通知発信から1週間で送達の効力が発生)に対応した自動リマインダーで、期限の見落としを防止します。

差分パッケージ機能: 追加提出の際に、前回パッケージ以降の新規文書のみを抽出し、号証番号も続きから自動付与します。

閲覧制限チェック: 秘匿情報(住所・氏名等の閲覧制限対象情報)が書面に含まれていないかをAIが検出し、mints提出前に警告します。

PII自動マスキング — すべてのAI機能の基盤

AILEXのすべてのAI機能には、PII(個人識別情報)自動マスキングが適用されています。外部AIに送信される前に、当事者名・住所・電話番号等がプレースホルダに自動置換され、AIの応答受信後に元の情報に復元されます。

この仕組みにより、クライアントへの同意説明は不要です。弁護士法第23条の守秘義務に配慮し、個人情報を外部AIサービスに送信しない設計を採用しています。


TreeeSが変える未来 — API公開の可能性と民間エコシステム

短期的にはAPI公開の見通しなし

現時点では、TreeeSの外部API公開に関する公式な計画は確認できません。mintsも同様にAPIを公開しておらず、日本の裁判所システムはクローズドな設計思想を維持しています。

中長期的にはエコシステムの可能性

しかし、米国のCM/ECFがEFSPマーケットプレイスを通じて民間リーガルテック企業と連携し、弁護士の利便性を大幅に向上させている事例は示唆的です。韓国のECFSも金融機関や登記所との外部連携を実現しています。

TreeeSの設計にRoootSの「関連システムとの外部連携機能」が含まれていることを考えると、将来的に段階的なデータ連携の仕組みが検討される可能性はゼロではありません。

AILEXはこの可能性に備え、API公開が実現した際に即座に対応できる技術基盤を整えています。現在のワークフローベースのアプローチから、API連携ベースのアプローチへのスムーズな移行を見据えた設計です。


まとめ — TreeeSの行方と、今やるべきこと

TreeeSは日本の司法デジタル化における最重要プロジェクトですが、その全貌はまだ不透明な部分が多く残ります。確実に言えることは以下の3点です。

① 2026年5月21日の電子提出義務化は確定しており、mints改修版で施行される。 TreeeSの遅延にかかわらず、この日までにmintsでの電子提出に対応しなければなりません。

② TreeeSの本格導入は2027〜2028年度の見通し。 弁護士はmintsを習得した後、数年以内にTreeeSへの再移行を経験することになります。

③ この「二重移行」を乗り越えるためのツールが、今求められている。 裁判所システムの変更に翻弄されるのではなく、自分たちの業務ワークフローを安定させる仕組みを持つことが重要です。

AILEXは、mintsであろうとTreeeSであろうと、弁護士の皆さまが同じ操作画面から、同じワークフローで業務を続けられる「リーガルOS」を目指しています。裁判所システムの変更を吸収するのはAILEXの役割であり、弁護士の皆さまが本来の業務——クライアントのために最善の法的サービスを提供すること——に集中できる環境を実現します。

まずは2026年5月21日。 AILEXと一緒に、民事裁判IT化の第一歩を踏み出しましょう。


本記事の内容は、裁判所公式サイト、日弁連発表資料、報道記事等の公開情報に基づいています。TreeeSの開発状況は今後変更される可能性があり、最新情報は裁判所公式サイトおよび日弁連からの案内をご確認ください。

本記事で紹介したAILEXの機能は、AIによるドラフト・参考資料の自動生成です。弁護士法第72条に基づき、生成された内容の最終確認・判断は弁護士が行ってください。AILEXは弁護士の業務効率化を支援するツールであり、法律事務を行うものではありません。

mints(民事裁判書類電子提出システム)およびTreeeS(Trial e-filing e-case management e-court Systems)は最高裁判所が開発・運営するシステムです。AILEXはこれらのシステムと直接のAPI連携を行うものではなく、提出用書類の準備・生成を効率化するツールです。


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