民事訴訟法91条|訴訟記録の閲覧は「何人も」請求できる?第三者・複写・制限を全整理
結論:民事訴訟法91条1項により、訴訟記録の閲覧は「何人も」(なんぴとも)裁判所書記官に請求できます。当事者でなくても、利害関係がなくても、理由を示す必要もありません。ただし「閲覧」と「複写(謄写・ダウンロード)」では請求できる人の範囲が異なり、例外的に閲覧が制限される場合もあります。本記事では、2026年5月21日の全面電子化後の条文(91条・91条の2・91条の3)を踏まえ、誰が・何を・どうやって見られるのかを一覧表で整理します。
民事訴訟法91条の内容──訴訟記録の閲覧は「何人も」請求できる
民事訴訟法91条1項は、何人も裁判所書記官に対して訴訟記録の閲覧を請求できる旨を定めています。ここでいう「何人も」は文字どおり誰でもという意味で、次の点がポイントです。
- 利害関係は不要──事件と無関係の研究者・記者・一般市民でも請求できます
- 理由の説明も不要──閲覧目的を問われることはありません
- 条文上の表記は「何人も」で、読みは「なんぴとも」。「何人でも」「誰でも」と検索されることもありますが、指している内容は同じです
この広い公開は、憲法82条が定める裁判の公開原則を、判決の言渡しだけでなく記録のレベルでも担保する趣旨と説明されます。裁判は公の手続であり、その記録も原則として社会の検証に開かれている──これが出発点です。
電子化後の条文マップ──91条・91条の2・91条の3
令和4年改正民訴法の全面施行(2026年5月21日)により、訴訟記録は電磁的訴訟記録が原則になりました。これに伴い、閲覧等のルールは3つの条文に整理されています。
| 条文 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 91条 | 非電磁的訴訟記録(電子化されていない部分・旧法事件の紙記録など) | 閲覧は何人も可。謄写等は当事者・利害関係を疎明した第三者 |
| 91条の2 | 電磁的訴訟記録 | 閲覧(表示したものの閲覧)は何人も可。複写(ダウンロード等)・内容証明付きの書面交付等は当事者・利害関係を疎明した第三者 |
| 91条の3 | 訴訟に関する事項 | 当事者・利害関係を疎明した第三者は事項証明書等の交付を請求できる |
2026年5月21日以降に提起された事件は基本的に91条の2の世界です。施行前に提起された旧法事件の紙記録は、従来どおり91条による閲覧になります(経過措置の解説参照)。
閲覧・複写・証明書交付──誰が何をできるかの一覧表
91条まわりで最も混同されやすいのが、「閲覧」は誰でもできるが「複写」はできないという区別です。行為ごとに請求権者を整理します。
| 行為 | 何人も(第三者含む) | 利害関係を疎明した第三者 | 当事者 |
|---|---|---|---|
| 閲覧(その場で見る) | ○ | ○ | ○ |
| 複写・謄写(コピー・ダウンロード) | × | ○ | ○ |
| 内容証明付きの書面・電磁的記録の交付 | × | ○ | ○ |
| 訴訟に関する事項の証明書 | × | ○ | ○ |
つまり、見ず知らずの第三者ができるのは「その場で読む」ことまで。記録を持ち帰る(複写する)には、当事者であるか、利害関係の疎明が必要です。
「何人も」の例外──閲覧が制限される3つの場合
原則公開にも例外があります。実務で押さえるべきは次の3つです。
- 公開を禁止した口頭弁論の記録──閲覧請求できるのは当事者と利害関係を疎明した第三者に限られます
- 92条の閲覧等制限決定──私生活についての重大な秘密や営業秘密が記載された部分について、当事者の申立てにより、閲覧・複写等を当事者に限定できます。和解調書も訴訟記録として原則閲覧対象になるため、この制限を検討する典型場面です(和解調書と第三者閲覧制限の解説)
- 住所・氏名の秘匿制度(133条以下)──DV・ストーカー事案等で、当事者の住所氏名等を相手方にも秘匿できる制度です(秘匿制度の注意点)
裏を返せば、制限の申立てをしない限り、提出した書面・書証は第三者に読まれ得るということです。この点は後述の実務問題に直結します。
第三者は具体的にどう閲覧するのか──裁判所設置端末での閲覧
電磁的訴訟記録の閲覧方法は立場によって異なります。
| 立場 | 閲覧方法 |
|---|---|
| 当事者・訴訟代理人 | mintsからオンラインで閲覧・ダウンロードできます(記録のオンライン閲覧ガイド) |
| 事件外の第三者 | 裁判所書記官に閲覧を請求し、裁判所に設置された端末上で表示されたものを閲覧する運用です。自宅のPCから誰でもオンラインで覗ける、という制度にはなっていません |
手数料は、記録の閲覧が1件につき150円とされています(事件の係属中に当事者等が請求する場合は不要)。複写や証明書交付の手数料は別に定められており、電子化に伴う関係規則の改正も続いているため、実際に請求する際は最新の額を裁判所の案内で確認してください。
いつまで閲覧できるか──訴訟記録の保存期間
訴訟記録は永久に残るわけではありません。裁判所の内部規程上、民事訴訟の事件記録の保存期間は事件完結から原則5年、判決書(電子判決書)は50年とされています。保存期間が満了して廃棄された記録は、当然ながら閲覧できません。「昔の事件の記録を見たい」という場合は、まだ保存されているかが最初のハードルになります。
行政事件訴訟の記録はどうなる?
行政事件訴訟法7条は、同法に定めのない事項について民事訴訟の例によると定めています。したがって、行政訴訟の記録の閲覧・複写も、基本的に本記事で整理した民訴法91条・91条の2と同じ枠組みで考えることになります。
弁護士側の実務問題──「閲覧される前提」で書面を作っているか
「何人も閲覧できる」というルールは、書面を提出する側から見ると「第三者に読まれる前提で出す」ことを意味します。全面電子化で記録が整然とデータ化された今、閲覧のハードルは紙時代より下がる方向です。それにもかかわらず、実務では次のような事故が起きがちです。
- 書証のPDFに依頼者の口座番号・病歴・マイナンバー等がマスキングされないまま紛れ込む
- 準備書面に営業秘密を詳述したのに、92条の閲覧等制限の申立てを失念する
- 和解条項に秘密保持を入れたのに、和解調書自体の閲覧制限を検討していない
閲覧制限は事後の申立てで対応できる場合もありますが、既に第三者に閲覧された後では取り返しがつきません。提出前に「これは誰に読まれてもよいか」を1件ずつ点検するのが唯一の予防策です。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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