mints基礎知識

民事訴訟「フェーズ3」とは?フェーズ1・2との違いと2026年5月21日に変わったことを一枚で整理

「民事訴訟 フェーズ3」「裁判所 フェーズ3」という言葉を調べる方が、義務化後も増え続けています。裁判所の資料には「このページに記載されている『フェーズ3』という用語は『民事訴訟手続のデジタル化』のこととなります」という注記があるとおり、フェーズ3=改正民事訴訟法の全面施行(2026年5月21日)によって実現した民事訴訟手続のデジタル化を指します。本記事では、フェーズ1・2との違い、根拠法と施行日、フェーズ3で変わった手続、対象外の手続、そしてTreeeS(ツリーズ)との関係まで、一次資料に沿って一枚で整理します。

フェーズ3とは──「3つのe」の最終段階

民事裁判のIT化は、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」を受けて同年10月に内閣官房に設置された「裁判手続等のIT化検討会」が、2018年3月に公表した「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ─『3つのe』の実現に向けて─」を出発点としています。3つのeとは次のとおりです。

  • e提出(e-Filing):訴状や準備書面、証拠をオンラインで提出する
  • e事件管理(e-Case Management):訴訟記録を電子化し、オンラインで閲覧・管理する
  • e法廷(e-Court):期日をウェブ会議等で実施する

この取りまとめは、法改正を要しない部分から段階的に進める「3段階(フェーズ)」の方針を示しました。法改正とシステム開発を要するe提出・e事件管理を実現する最終段階がフェーズ3です。

フェーズ1・2・3の違いを時系列で整理

段階時期内容根拠
フェーズ12020年2月〜現行法の枠内で、ウェブ会議等を活用した争点整理(書面による準備手続・弁論準備手続で電話会議の代わりにウェブ会議を利用)。一部の地裁から始まり全国へ拡大法改正なし(運用)
フェーズ22023年3月1日〜弁論準備手続・和解期日に当事者双方がウェブ会議で参加可能に。2024年3月1日からは口頭弁論期日もウェブ会議で実施可能に(改正民訴法87条の2)。なお2023年2月20日には住所・氏名等の秘匿制度が先行施行令和4年法律第48号の一部施行
フェーズ32026年5月21日〜電子申立て(訴訟代理人は義務)、システム送達、訴訟記録の電子化とオンライン閲覧、手数料の電子納付、電子判決書。e提出・e事件管理の実現令和4年法律第48号の全面施行

mints(民事裁判書類電子提出システム)自体は、フェーズ3に先行する仕組みとして2022年2月に試行運用が始まり、順次全国の裁判所に広がりました。フェーズ3の開始にあたっては、新システムではなく改修されたmintsが使われています(3回の改修まとめ)。

根拠法と施行日:なぜ「2026年5月21日」なのか

フェーズ3の根拠となる「民事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第48号)は、2022年5月18日に成立し、同月25日に公布されました。附則で「公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行するとされ、その期限が2026年5月24日でした。施行日を定める政令により、全面施行日は令和8年(2026年)5月21日と確定しています(義務化はいつからかの解説)。

もうひとつ押さえておきたいのが、2023年6月14日に公布された「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和5年法律第53号)です。こちらは民事執行・倒産・家事事件・人事訴訟・非訟事件・労働審判などのデジタル化を定め、公布から5年以内、すなわち2028年(令和10年)6月までに施行される予定です。「フェーズ3」という言葉は前者(民事訴訟)を指し、後者は次の段階として区別して理解する必要があります。

フェーズ3で変わった5つのこと

変更点概要主な条文
電子申立て誰でも裁判所のシステム(mints)でオンラインの訴え提起・書面提出が可能。弁護士等の訴訟代理人は義務(正当な理由のない書面提出は不適法)民訴法132条の10、132条の11
システム送達裁判所からの送達をmints上で受領。閲覧・ダウンロード、または通知から1週間経過のいずれか早い時点で効力発生民訴法109条の2〜109条の4
訴訟記録の電子化電子データが正式な訴訟記録に。当事者はオンラインで閲覧・ダウンロード、第三者も裁判所端末等で閲覧民訴法91条の2
手数料の電子納付収入印紙に代えてペイジー等で納付民事訴訟費用等に関する法律の改正
電子判決書判決書が電子データとして作成され、システム送達される。紙の「正本」は交付されない民訴法252条、253条

このほか、公示送達が裁判所ウェブサイトへの掲載を伴う方法に変わり(111条)、ウェブ会議による証人尋問の要件が見直されるなど、多くの見直しが同時に施行されています。全機能の一覧はフェーズ3の全機能と新操作、書式はフェーズ3で使用する書式一覧にまとめています。

フェーズ3の対象外:人事訴訟・家事事件・民事執行・倒産など

裁判所は「民事執行、倒産、労働審判等の非訟手続や、人事訴訟手続、家事事件手続については、令和8年5月21日に施行された民事訴訟手続のデジタル化によるオンライン申立て等の対象外」であり、「これらの手続は、令和10年6月までにオンライン申立て等の対象となる予定」と明記しています。離婚訴訟(人事訴訟)や遺産分割調停(家事事件)はフェーズ3の義務化の対象ではありません。この区別を誤った情報が少なくないため、家事・相続・離婚は範囲外という整理もあわせてご確認ください。

「フェーズ3=TreeeS」ではない

当初、フェーズ3は新システムTreeeS(ツリーズ)で実施される計画でしたが、開発の遅れから、フェーズ3の開始時点では改修版mintsで対応することになりました。日弁連の2026年5月21日付会長声明は、2027年度中にTreeeSが導入され、導入後は申立て方法が異なる複数種類の事件が併存するため過誤に注意が必要だと指摘しています。TreeeSの読み方は最高裁の調達仕様書で「ツリーズ」と明記されています(TreeeSの読み方の根拠TreeeSとmintsの違い)。

フェーズ3を理解するための一次資料の使い分け

資料役割
民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引(令和8年6月19日更新・49頁)制度と手続の全体像。根拠条文付きの「地図」(最新版の変更点
mints操作マニュアル(2.3版・令和8年7月15日改訂)画面ごとの操作方法(2.3版の読み方
mints Q&A個別の疑問への一問一答
フェーズ3で使用する書式・説明動画届出書式、証拠説明書、CSV作成ツール、操作動画

問題は「フェーズ3を知っている」と「対応できている」の差

フェーズ3の概要を理解している弁護士は増えました。しかし実務で問われるのは、電子申立て義務の例外事由を安易に見込まないこと、システム送達の1週間みなしを起点に控訴期間を計算すること、電子判決書を関連付け解除前にダウンロードすること、といった日々の運用です。裁判所の準備の手引は改訂を重ね、操作マニュアルも版を更新しています。制度の全体像を押さえたうえで、変わり続ける細部を追いかける体制が必要です(電子送達1週間ルールの解説)。

AILEXなら「フェーズ3の運用」を仕組みに変えられる

AILEX(エーアイレックス)は、mintsによる電子提出の準備から、システム送達後の期限管理までをワンストップで支援する法律事務所向けのAI SaaSです。証拠説明書の立証趣旨をAIが下書きし、mints新規申立てフォームに貼り付ける「申立ての趣旨」「請求の原因」のテキストを文字数付きで生成、提出前には号証の欠番や表記揺れをAIがチェックします。送達記録を登録すれば1週間ルールの期限をカウントダウンし、次回期日も書類から自動抽出してリマインドします。裁判所公式のシステムではない第三者ツールですが、フェーズ3で増えた「調べる・確認する・計算する」作業を減らすために設計されています。フェーズ3の全体像を理解した次の一歩として、無料でお試しください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社(エーアイレックス)|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら

よくある質問

民事訴訟の「フェーズ3」とは何ですか?

改正民事訴訟法(令和4年法律第48号)の全面施行によって2026年5月21日から実現した民事訴訟手続のデジタル化のことです。裁判所の資料でも「フェーズ3」は「民事訴訟手続のデジタル化」を指すと注記されています。電子申立て、システム送達、訴訟記録の電子化、電子納付、電子判決書が主な内容です。

フェーズ1・フェーズ2とは何が違うのですか?

フェーズ1(2020年2月〜)は法改正なしでウェブ会議を争点整理に活用した段階、フェーズ2(2023年3月〜)は弁論準備手続・和解や口頭弁論をウェブ会議で行えるようにした段階です。フェーズ3は訴状の電子提出や記録の電子化といった、法改正とシステム整備を要する最終段階にあたります。

フェーズ3はTreeeSで実施されているのですか?

いいえ。フェーズ3の開始時点では改修されたmintsで対応しています。新システムTreeeS(ツリーズ)は日弁連会長声明によれば2027年度中に導入される予定で、導入後は複数の申立て方法が併存するため過誤への注意が必要とされています。

離婚訴訟や家事調停はフェーズ3の対象ですか?

対象外です。人事訴訟・家事事件・民事執行・倒産・労働審判等は、令和5年法律第53号により令和10年(2028年)6月までに別途オンライン申立ての対象となる予定です。

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