TreeeS導入は2027年度中の見込み|延期の経緯と弁護士の備え
TreeeSとは
TreeeS(ツリーズ)は、最高裁判所が開発を進めている次世代の裁判手続システムです。mintsが「書類を電子提出する」ことに特化しているのに対し、TreeeSは申立てから事件管理、期日運営までを統合的に扱う構想で設計されています。将来的には家事事件や民事執行など、mintsの対象外である手続もカバーする位置づけです。
導入時期:2027年度中の見込み
2026年5月21日付の日弁連会長声明では、TreeeSが2027年度中に導入されるという前提で記述されています。現時点で参照できる最も明確な時期の目安です。
なぜ延期されたのか
TreeeSの開発は当初の計画どおりには進みませんでした。報道によれば、30億円を超える予算規模で開発が委託され、2025年10月までの完成が想定されていましたが、テスト段階で不具合が頻発し、期限に間に合わない状況となりました。その結果、2026年2月に導入延期が決定されています。
ここで重要なのは、延期されても2026年5月21日の義務化は予定どおり実施されたという点です。TreeeSが間に合わないなら義務化も延びる、とはなりませんでした。
暫定対応としてのmints改修
TreeeSが間に合わないため、既存のmintsに機能を後付けする形で全面施行に対応しました。新規申立て機能、電子送達機能、記録一覧機能、電子納付機能は、いずれもこの改修によって実装されたものです。
つまり現在私たちが使っているmintsは、本来TreeeSが担うはずだった役割を暫定的に引き受けている状態です。この事実を理解しておくと、なぜmintsの新規申立てフォームに独特の制約(訴額は万円単位、申立ての趣旨400字など)があるのかも腑に落ちます。
まだ公表されていない重要論点
TreeeSについて、実務家がもっとも知りたい部分は現時点で公表されていません。
- mintsからTreeeSへのデータ移行方式 — 係属中の事件記録がどう引き継がれるか
- アカウントの移行 — 既存のmintsアカウントがそのまま使えるのか、再登録が必要か
- 並行運用期間の長さ — mintsとTreeeSが同時に稼働する期間がどれだけ続くか
- mintsの廃止時期
これらについて確定的な情報を語る記事があれば、出典を確認してください。本記事執筆時点では公式アナウンスを確認できていません。
最大のリスクは「二重移行」ではなく「併存」
紙 → mints → TreeeS という二段階の移行コストがしばしば問題視されます。しかし実務上より危険なのは、移行期間中に複数のルールが同時に走ることです。
日弁連会長声明も、TreeeS導入後は申立て方法の異なる数種類の事件が併存するため過誤に注意が必要である旨を指摘しています。現在すでに、2026年5月20日以前の提起事件と以後の事件で扱いが異なります。ここにTreeeS対応事件が加われば、事務所内で3系統以上の運用が並走します。
今からできる備え
- 事件ごとの適用ルールを台帳化する — 提起日・手続類型・提出方法を事件単位で記録する
- PDF作成スキルは無駄にならない — TreeeSでもPDFのアップロードは主要な提出方式と考えられ、用紙サイズ・パスワード・メタデータへの対応は共通して必要
- データを自事務所に持つ — システムが変わっても手元に記録が残る運用にしておく
- 未公表事項を前提に計画を立てない — 移行方式が判明してから動いても遅くない領域を切り分ける
日弁連会長声明の記載(2026年5月21日)
導入時期について最も明確な一次的記述は、2026年5月21日付の日弁連会長声明にあります。同声明は2027年度中には新システムTreeeSが導入され、導入後は申立て方法が異なる数種類の事件が同時併存するため、利用者及び裁判所関係者は過誤が生じないよう注意する必要があるという趣旨を述べています。
ここから読み取れるのは2点です。ひとつは導入時期が2027年度中と見込まれていること。もうひとつは、導入後もmintsが直ちに消えるわけではなく、複数の申立て方法が並存する期間があるということです。
先行導入の見込み
士業者団体のアナウンスによれば、TreeeSは2027年1月から名古屋高裁本庁・名古屋地裁(支部を含む)および管内の各簡易裁判所で先行導入され、全庁導入は2027年度中を目指すとされています。ただしこれを確定した日程として最高裁が公表した文書は確認できていません。現時点では見込みとして扱うべき情報です。
第3次開発の契約期間
家事事件手続等への対応拡大にあたる第3次開発(改修)の契約期間は、調達仕様書によれば令和7年9月1日から令和10年3月31日までです。家事事件・人事訴訟等のデジタル化は令和5年法律第53号に基づき2028年(令和10年)6月までに実施される予定であり、契約期間はその期限に合わせて設定されていることが分かります。
AILEXはシステムが変わっても残る層を担う
AILEX(エーアイレックス)は、提出前の書面準備・PDF要件チェック・証拠番号の付番・期限管理を担います。これらは提出先のシステムが何であっても必要な工程です。
mintsからTreeeSへ移行しても、書面を作り、証拠を整理し、期限を守るという実務の骨格は変わりません。システム側の変化に振り回されない層を自事務所側に持っておくことが、移行期を乗り切る最も堅実な方法です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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