弁護士の書類保管義務は何年?保管期間の法的根拠と電子保存の可否を解説
「何年保管すればいいのかわからない」——弁護士が抱える保管期間の悩み
弁護士にとって、終了した事件の記録をいつまで保管すべきかは悩ましい問題です。「3年で良い」と言う人もいれば「10年は必要」「永久に保管すべき」という意見もあります。
この混乱の原因は、弁護士の事件記録保管について明確な年数を定めた法律が存在しないことにあります。本記事では、関連する法令・規程を網羅的に整理し、実務上の判断基準を示した上で、2026年5月21日のmints義務化を見据えた電子保存への移行についても解説します。
弁護士職務基本規程が定めること・定めないこと
第18条:保管の「方法」の規定
弁護士職務基本規程(日弁連会規第70号、2004年制定・2005年施行)の第18条は、事件記録の保管・廃棄について定めています。しかし重要なのは、この条文が規定しているのは「保管・廃棄の際に秘密やプライバシー情報が漏れないよう注意しなければならない」という方法のみであり、具体的な保管期間は一切定めていないという点です。
関連する他の条文
同規程には他にも関連条文があります。第23条は秘密の保持義務、第39条は預り品の善管注意義務による保管、第45条は預り金等の遅滞なき返還義務を定めています。しかし、いずれも保管年数の明示はありません。
旧民法171条の「3年」はもう使えない
かつての根拠:弁護士の書類返還義務に3年の消滅時効
以前は旧民法第171条が、弁護士が事件終了後に書類を返還する義務の消滅時効を3年と定めていました。この規定は「弁護士は最低3年間は書類を保管する義務がある」と解釈されてきました。
2020年4月の民法改正で条文削除
しかし、2017年の民法改正(2020年4月1日施行)により、旧民法171条は削除されました。短期消滅時効の制度自体が廃止されたためです。現在は一般の消滅時効として、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方が適用されます。
つまり、「3年保管すれば十分」という従来の根拠はもはや通用しません。
実務上の保管期間——事務所ごとの判断基準
法律で明確な保管年数が定められていない以上、各事務所が独自に方針を定める必要があります。実務上は以下のような基準が見られます。
| 保管期間 | 根拠・理由 | 採用する事務所のタイプ |
|---|---|---|
| 3年 | 旧民法171条の慣行(廃止後も参照) | 個人事務所の一部 |
| 5年 | 改正後の消滅時効(主観的起算点) | 多くの標準的事務所 |
| 7年 | 税務書類の保管義務に合わせた対応 | 税務も扱う総合事務所 |
| 10年 | 確定判決の執行期限・客観的消滅時効 | 訴訟中心の事務所 |
| 永久 | 将来の照会に備えた念のため保管 | 大手法律事務所 |
現実的には5年を最低ラインとし、訴訟の種類に応じて延長するのがバランスの取れた対応です。
税務書類・マネロン対策書類の保管義務
税務関連書類:7年〜10年
法律事務所は事業体としても書類保管義務を負います。法人税法では帳簿・証憑類を7年間(欠損金がある事業年度は10年間)保存する義務があります。所得税法では青色申告の帳簿類は7年、その他書類は5年の保存義務があります。
マネーロンダリング対策:5年
日弁連の「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程」では、本人確認記録・取引記録を5年間保存する義務が定められています。
事件記録の電子保存は法的に認められるか?
結論:紙保管を義務付ける規定はない
弁護士の事件記録について、紙での保管を義務付ける法律上の条文は存在しません。したがって、事件記録のデジタル化(PDF化・クラウド保存)と紙の原本廃棄は、原則として許容されます。
弁護士情報セキュリティ規程への対応が必要
ただし、2022年6月に制定された弁護士情報セキュリティ規程(日弁連会規第117号、2024年6月1日施行)により、全弁護士は情報セキュリティの基本的取扱方法を策定する義務を負います。電子保存を行う場合は、以下の対策が必要です。
- パスワード・暗号化によるアクセス制限
- 外部持ち出し時の安全措置
- 廃棄時の適切なデータ消去
- クラウドサービス利用時の監督義務
電子帳簿保存法との関係
2024年1月1日からの電子帳簿保存法完全義務化により、メール・クラウド等で受領した請求書・領収書・契約書等は電子のまま保存が必須です(印刷して紙保管は不可)。法律事務所の経理書類にもこのルールが適用されるため、紙保管から電子保存への移行はすでに避けられない流れです。
mints義務化で保管の形が根本から変わる
2026年5月21日のmints全面施行後は、mintsにアップロードしたPDFが正式な訴訟記録となります。これは従来の「紙の記録が原本」という概念を根本から変える変化です。
今後新しく発生する事件については、提出書類はすべてPDFとして電子的に管理されます。つまり、新規事件については紙の保管コストが原理的に発生しなくなるのです。
AILEXで保管義務と電子化を両立する
AILEX(エーアイレックス)は、事件記録の電子管理とmints提出準備を統合した弁護士事務所向けAIソリューションです。
事件ごとの書類一元管理
AILEXに登録した事件には、準備書面・証拠書類・メモをすべて紐づけて保管できます。ZIP一括インポートやWord/Excel対応で、既存書類の取り込みも容易です。
AI-OCRでスキャン書類もテキスト検索可能に
紙書類をスキャンしてAILEXにアップロードすれば、AI-OCRが自動でテキストを認識。「あの事件のあの証拠」を探す時間が劇的に短縮されます。
PII自動匿名化でセキュリティ規程にも対応
AILEXは外部AIへのデータ送信時に当事者名・事件番号等の個人識別情報を自動でプレースホルダに置換し、AI応答後に復元する独自の匿名化処理を搭載。弁護士情報セキュリティ規程が求める安全管理措置に配慮した設計です。
まとめ——「いつまで保管するか」から「どう電子化するか」へ
弁護士の書類保管義務に明確な年数規定はありませんが、改正民法の消滅時効(5年/10年)と税務書類の保管義務(7年)を踏まえれば、最低5年、安全を見て7〜10年の電子保存が実務上の最適解です。
mints義務化を機に、紙の保管から電子保存への移行を進めましょう。AILEXなら、保管義務・セキュリティ・mints対応のすべてを1つのプラットフォームで実現できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
運営:AILEX合同会社|顧問弁護士事務所:弁護士法人えそら
よくある質問
弁護士は事件記録を何年間保管する義務がありますか?
弁護士職務基本規程には具体的な保管年数の規定がありません。実務上は5年を標準とする事務所が多いですが、旧民法171条の3年(2020年に廃止)を参照する事務所や、10年以上保管する事務所もあります。
事件記録を電子データで保存することは認められますか?
事件記録について紙保管を義務付ける法律上の規定は存在しないため、電子保存は原則として許容されます。ただし弁護士情報セキュリティ規程に基づく安全管理措置が必要です。
旧民法171条が廃止された後、保管期間はどう考えればよいですか?
2020年4月の民法改正で旧171条は削除されました。現在は一般の消滅時効として権利行使可能を知った時から5年、または権利行使可能時から10年が適用されます。
法律事務所の税務書類は何年保管が必要ですか?
法人税法では帳簿・証憑類を7年間(欠損金がある事業年度は10年間)保存する義務があります。