相談データの蓄積が、事務所の「経験則」を「経営資産」に変える — AILEX相談管理の活用法


ベテラン弁護士の頭の中には、長年の経験から培われた「感覚」があります。

「不動産会社からの賃料滞納の相談は、だいたい3ヶ月以内に調停になる」「IT企業の残業代請求は金額が大きくなりがち」——こうした肌感覚は、何十件、何百件という相談を経て磨かれたものです。

しかし、この「経験則」には2つの問題があります。

一つは、言語化されていないこと。ベテランの頭の中にしかないため、事務所内で共有できず、若手の育成にも活かしにくい。もう一つは、検証できないこと。「なんとなくそう感じる」という段階にとどまり、本当にそうなのかを数字で確かめる手段がない。

AILEXの相談管理機能は、日々の法律相談の記録を構造化データとして蓄積することで、この「経験則」を数字で裏づけられる経営資産に変えていきます。


相談管理が記録する情報

AILEXの相談管理では、一件の法律相談について以下の情報を記録します。

相談者の属性 — 氏名、個人か法人か、業種、どこから紹介されたか(知人紹介・Web検索・ポータルサイト等)、リピーターかどうか。

相談の内容 — 法律分野(民事・刑事・家事・商事・労働・行政等)とサブカテゴリ、相談内容の要約、紛争金額のレンジ、緊急度。

対応の結果 — 受任したか、他の事務所を紹介したか、相談のみで解決したか、フォロー中か。受任した場合は事件管理と自動的に紐づきます。

相談の経路と所要時間 — 来所・電話・オンライン・メール・LINEといった相談方法と、実際にかかった時間。

一つひとつは「いつもの相談記録」にすぎません。しかし、これが10件、50件、100件と蓄積されていくと、そこにパターンが浮かび上がってきます。


データが見せてくれるパターン

相談データの蓄積により、たとえば次のような分析が可能になります。

業種×分野の傾向

「不動産業からの相談で、賃料不払いに関するものは、3ヶ月以内に調停に発展しやすい」——こうした傾向がデータから見えてくれば、初回相談の時点で「調停になる可能性が高いので、早めに証拠を整理しておきましょう」と、より具体的な見通しを伝えることができます。

金額帯の把握

「IT企業からの残業代請求は、紛争金額が1,000万円以上になるケースが多い」——こうした傾向を把握しておけば、類似の相談が来た際に、事件の規模感を早期に想定でき、適切な体制や費用の見積もりにつなげられます。

受任率と紹介元の関係

「知人紹介からの相談は受任率が高いが、ポータルサイト経由は相談のみで終わることが多い」——紹介元ごとの受任率が数字で見えれば、どこに注力すべきかの判断材料になります。

相談方法と案件化の関係

「オンライン相談からの受任は増加傾向にある」「電話相談は平均15分で終わるが、来所相談は50分かかる」——こうした数字は、今後の相談体制をどう設計するかの判断に直結します。


「見える化」が事務所経営にもたらすもの

相談データの分析は、大きく3つの場面で事務所経営を支えます。

初回相談の質が上がる

過去の類似相談の傾向を踏まえて対応できるため、「この類型の相談は、このくらいの期間でこういう展開になることが多い」という見通しを、経験の浅い弁護士でもデータに基づいて伝えることができます。

これは弁護士の専門的判断を代替するものではありません。あくまで過去の自事務所の相談実績に基づく参考データとして、弁護士の判断を補助するものです。

事務所の強みが客観的にわかる

「うちは離婚と相続が多い」という漠然とした認識が、「家事事件が全体の42%を占め、そのうち離婚関連が68%」という具体的な数字に変わります。事務所の強みが客観的にわかれば、Webサイトの打ち出し方や注力分野の判断にも活かせます。

フォロー漏れを防げる

対応結果が「フォロー中」のまま放置されている相談がないか、フォロー期日が近づいている相談はないか——相談管理の一覧画面で、これらを一目で確認できます。「相談を受けたまま連絡を忘れていた」という事態を防ぐことは、依頼者との信頼関係の基盤です。


事件管理との連携

AILEXの相談管理は、事件管理機能と連携しています。

相談の対応結果を「受任」に変更すると、その相談を事件として登録し、相談記録と事件が自動的に紐づきます。相談段階で記録した情報——相談者の属性、分野、紛争金額、相談内容の要約——が事件の初期情報として引き継がれるため、同じ情報を二度入力する手間がありません。

この紐づけにより、「相談から受任に至った案件」と「相談のみで終わった案件」の比較分析も可能になります。どのような相談が受任につながりやすいのかを把握することは、事務所の経営判断において重要な情報です。


日々の記録が、未来の判断材料になる

相談データの分析は、データが蓄積されて初めて意味を持ちます。10件の相談記録からはパターンは見えませんが、100件を超えたあたりから、傾向が浮かび上がり始めます。

大切なのは、特別なことをするのではなく、日々の相談を記録し続けることです。AILEXの相談管理は、この「記録を続ける」という行為のハードルをできるだけ下げるために、分野やサブカテゴリの選択式入力、紛争金額のレンジ選択、対応結果のワンクリック更新といった設計にしています。

ベテラン弁護士の経験則は、間違いなく価値のある知見です。その知見を、データという形で蓄積し、事務所全体で共有し、数字で検証できるようにすること——AILEXの相談管理が目指しているのは、そうした仕組みづくりです。


※ 本記事で紹介した分析例は、相談データの蓄積により可能となる活用方法の例示です。分析結果は事務所ごとのデータに依存し、法的助言や案件の見通しを保証するものではありません。法的判断は弁護士ご自身の専門的見解に基づいて行ってください。

※ 相談管理に記録された情報はAILEX内で管理され、他の事務所のデータと共有・統合されることはありません。

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