公開日: 2026年2月
カテゴリ: 機能紹介 / 新機能
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法律文書の正確性は、弁護士の信頼そのものです。
準備書面で引用した判例番号が間違っていた。陳述書に記載した日付が客観的事実と矛盾していた。契約書チェックで見落としたリスク条項が、後になって問題になった。——こうした「うっかりミス」は、訴訟の帰趨を左右し、弁護士としての信頼を損なうリスクに直結します。
特に1〜5名規模の小規模事務所では、書面のダブルチェックを行う同僚がいないことも少なくありません。日弁連の経済基盤調査によれば、弁護士1人事務所は全事務所の62%(11,436所)を占めており、自分が起案した書面を自分だけで確認するという構造的なリスクを抱えています。
AILEXは、この課題に「AIによるファクトチェック」という回答を提示してきました。そして今回、そのファクトチェック機能を大幅に拡張し、AILEXで扱うすべての法律文書を対象に、ワンクリックで事実検証を実行できるようになりました。
本記事では、拡張されたファクトチェック機能の全体像と、具体的な活用シーンをご紹介します。
ファクトチェック機能とは何か — 「AIが生成し、AIが検証する」仕組み
AILEXのファクトチェック機能は、法律文書に含まれる事実主張をAIが自動検証する仕組みです。
たとえば、準備書面に「民法第415条に基づく債務不履行責任」と記載されている場合、AIが民法第415条の条文内容を確認し、引用が正確かどうかを検証します。判例を引用している場合は、事件番号・裁判年月日・判示内容の正確性を外部情報源と照合します。日付や金額の記載があれば、文書内の他の記述との整合性もチェックします。
検証結果は、項目ごとに「✅ 確認済み」「⚠️ 要確認」「❌ 要修正」の3段階で判定され、根拠となる出典URLとともに表示されます。弁護士は、AIが指摘した「要確認」「要修正」の項目だけを重点的に確認すればよいため、ダブルチェックの工数を大幅に削減できます。
重要な点として、ファクトチェック機能は弁護士法第72条の「法律事務」には該当しません。AIが行うのは事実関係の照合と情報の正確性検証であり、法的判断や訴訟戦略の策定は一切行いません。最終的な判断は常に弁護士が行い、AIはその判断を支援する「セカンドオピニオン」の役割を果たします。
今回の拡張 — 5つの検証対象
これまでのAILEXでは、AIチャットでの法律相談時に回答内容を自動検証する機能のみを提供していました。今回の拡張により、AILEXで扱うすべての法律文書がファクトチェックの対象になりました。
対象1:AI生成文書(27テンプレート)
AILEXのAI文書生成機能で作成した訴状、準備書面、答弁書、契約書など27種類のテンプレートすべてが対象です。
生成結果の画面に表示される「🔍 ファクトチェック」ボタンをクリックするだけで検証が開始されます。AIが生成した文書をAIが検証する——「生成と検証の分離」は、AIを業務に活用する上での基本原則です。生成AIは流暢な文章を出力しますが、その正確性は別のAIで検証する必要があります。AILEXはこの原則をワンクリックで実現します。
活用シーン: 訴状をAI生成した後、提出前に「引用した条文番号は正しいか」「請求額の計算根拠に矛盾はないか」をファクトチェックで検証する。
対象2:アップロード済みPDF文書
事件に登録されたPDF文書(相手方から受領した準備書面、裁判所からの書面、証拠書類など)もファクトチェックの対象になりました。
これを実現するために、日本語PDF専用のテキスト抽出エンジンを新たに開発しました。日本語の法律文書で広く使われるCIDフォント(Identity-Hエンコーディング)に対応し、PDF内部のToUnicode CMapを解析してテキストを正確に復元します。従来のPDFテキスト抽出ツールでは文字化けしていた日本語PDFからも、正確にテキストを抽出できます。
抽出されたテキストは自動的にデータベースに保存されるため、2回目以降のファクトチェックはさらに高速に実行されます。なお、テキスト抽出がどうしても困難な場合(スキャン画像のみのPDFなど)は、OpenAI GPT-4oによるOCRフォールバックが自動的に作動します。
活用シーン: 相手方の準備書面に記載されている判例引用が正確かどうか、反論書面を起案する前にファクトチェックで検証する。
対象3:Word文書(.docx)
Word文書もファクトチェック対象です。.docxファイルからテキストを自動抽出し、PDF文書と同様にファクトチェックを実行します。
活用シーン: 依頼者から受領したWord形式の契約書ドラフトについて、条文引用の正確性を確認する。
対象4:契約書チェック結果
既存の「契約書チェック」機能(β版)で分析した結果についても、ファクトチェックを実行できます。AIが検出したリスク条項の指摘が法的に正確かどうかを、さらに別のAIで検証する二重チェック体制です。
対象5:陳述書ドラフト(新機能)
今回の拡張に合わせて、陳述書ドラフトのAI生成機能を新たに搭載しました。事件に登録された情報と弁護士が入力したメモに基づき、AIが陳述書のドラフトを自動生成します。そして、その生成結果に対してファクトチェックを実行できます。
陳述書は「証人が体験した事実を時系列で記述する」文書であり、事実関係の正確性が生命線です。AIが生成した陳述書ドラフトの事実主張を、ファクトチェック機能で検証することで、「AIに任せたら事実と異なる記載がされていた」というリスクを防ぎます。
陳述書ドラフト機能の詳細は、本記事の後半で解説します。
ファクトチェックの検証項目 — AIは何をチェックするのか
ファクトチェック機能は、法律文書の正確性を以下の観点から検証します。
条文引用の正確性
文書内で引用されている法律の条文番号と内容の対応を検証します。「民法第709条」と記載されている場合、その条文が不法行為に関する規定であることを確認し、引用された条文内容が正確かどうかをe-Gov法令検索などの公的情報源と照合します。
判例引用の正確性
判例の事件番号、裁判年月日、裁判所名、判示内容の正確性を検証します。「最判平成10年9月3日」のような引用について、実際にその日付にその裁判所で判決が出されているか、判示内容が正確に引用されているかを確認します。
事実関係の整合性
文書内の日付、金額、当事者名などの事実記載に内部矛盾がないかを検証します。「令和5年3月に契約を締結し、同年2月に解除通知を送付した」のような時系列の矛盾を検出します。
法的解釈の妥当性
法的主張の論理構成に明らかな飛躍や矛盾がないかを確認します。ただし、これはあくまで「明らかなエラーの検出」であり、訴訟戦略に関わる法的判断をAIが行うものではありません。
新機能:陳述書ドラフト AI生成
ファクトチェック機能の拡張に合わせて、陳述書ドラフトのAI生成機能を新たにリリースしました。
なぜ陳述書のAI生成が必要なのか
陳述書は、証人や当事者本人が法廷で証言する内容を事前に書面化したものです。訴訟の帰趨を左右する重要な書面ですが、その作成には独特の難しさがあります。
法的な主張ではなく「事実の陳述」に徹する必要がある一方で、訴訟戦略を踏まえた構成が求められます。時系列で具体的な事実を記述しつつ、重要な争点に関連する部分を厚く記述するバランス感覚が必要です。しかも、陳述者(証人)の口調で書く必要があり、弁護士が起案しても「いかにも弁護士が書いた」文章にならないよう配慮が求められます。
小規模事務所では、陳述書の起案に数時間を要することも珍しくありません。AIにドラフトを生成させ、弁護士がそれを修正・調整するワークフローは、この負担を大幅に軽減します。
使い方
ナビゲーションメニューの「ツール」から「📝 陳述書ドラフト」を選択するか、ダッシュボードのツールセクションからアクセスできます。
ステップ1:情報入力
「✏️ 新規陳述書を生成」ボタンをクリックし、以下の情報を入力します。
- 事件の選択 — 陳述書が紐づく事件を選びます。事件に登録された情報(当事者、概要など)がAIの文脈として自動的に反映されます
- 陳述者の氏名 — 陳述書の名義人となる方の氏名
- 立場 — 原告・被告・証人・関係者から選択
- メモ — 陳述書に盛り込みたい事実・経緯・主張をメモ形式で入力
メモは箇条書きで構いません。「令和5年3月に契約締結」「6月に相手方が債務不履行」「8月に催告書を送付」のように、要点を時系列で記載するだけで、AIが陳述書の形式に整えます。
ステップ2:AI生成
「✏️ AI生成」ボタンをクリックすると、30〜60秒でAIが陳述書ドラフトを生成します。生成されるドラフトには以下の要素が含まれます。
- 表題(「陳述書」)
- 宛先(裁判所名)
- 陳述者の自己紹介と当事者との関係
- 事実経過(時系列で具体的に記述)
- 各事実に対する認識・評価
- 結論
- 署名欄
ステップ3:ファクトチェック
生成されたドラフトのカード上に「🔍 ファクトチェック」ボタンが表示されます。これをクリックすると、ドラフト内の事実主張がAIによって検証されます。「令和5年3月に契約を締結」という記述があれば、事件情報との整合性や、その前後の時系列に矛盾がないかを確認します。
PII保護
陳述書には当事者の氏名・住所などの個人情報が含まれます。AILEXのPII自動マスキング機能により、AI生成時もファクトチェック時も、個人情報はプレースホルダに自動置換された状態で外部AIに送信されます。応答受信後に元の情報に復元されるため、依頼者への個別の同意説明は不要です。
免責事項
AI生成された陳述書ドラフトは「たたき台」です。陳述書は証人の体験に基づく文書であり、AIが事実を創作することは許されません。弁護士は必ず以下を確認してください。
- 記載された事実が陳述者の実際の体験と一致しているか
- 時系列に誤りがないか
- 誇張や不正確な表現がないか
- 陳述者本人の口調として自然か
操作画面の改善 — ファクトチェック実行中のモーダル表示
ファクトチェック機能の拡張に合わせて、操作画面も改善しました。
実行中のモーダル表示
ファクトチェックは外部AIサービスとの通信を伴うため、30〜60秒の処理時間が必要です。従来は処理中にページを離れるとチェック結果が失われるリスクがありましたが、今回の改善でモーダルウィンドウ(ポップアップ)が表示されるようになりました。
実行中のモーダルには「🔍 ファクトチェック実行中…」のスピナーと「法務AIで法的正確性を検証しています。この処理には30〜60秒かかる場合があります」のメッセージが表示されます。処理が完了すると、同じモーダル内に結果が表示されます。
文書管理ページへのファクトチェックボタン追加
文書管理ページ(/documents)の各文書行に「🔍」ファクトチェックボタンを追加しました。事件詳細ページに移動しなくても、文書一覧から直接ファクトチェックを実行できます。
技術的な設計 — なぜAILEXのファクトチェックは信頼できるのか
検証と生成の分離
AILEXのファクトチェック機能が信頼できる理由の一つは、文書生成と事実検証に異なるAIを使用している点です。
文書生成にはOpenAI GPT-4oを使用し、ファクトチェックにはリアルタイムWeb検索機能を持つ別のAIを使用しています。生成AIは学習データに基づいて流暢な文章を出力しますが、検証AIはリアルタイムで外部情報源にアクセスし、生成された内容の正確性を確認します。
この「生成と検証の分離」は、人間の業務フローにおける「起案者と確認者の分離」と同じ原理です。同一のAIが生成と検証の両方を行うと、自分のエラーを自分で見つけられないリスクがあります。異なるAIを使用することで、このリスクを構造的に排除しています。
出典の明示
ファクトチェック結果には、検証に使用した情報源のURLが出典として表示されます。e-Gov法令データベース(https://elaws.e-gov.go.jp/)、最高裁判所判例検索(https://www.courts.go.jp/)、官公庁の公式サイトなど、一次情報源からの検証結果を提供します。
弁護士は、AIの検証結果を鵜呑みにするのではなく、表示された出典URLを自分の目で確認することで、ファクトチェックの精度を担保できます。
PII自動マスキング
すべてのファクトチェック処理において、AILEXのPII自動マスキング(PIIMasker)が適用されます。事件番号、当事者名、住所、電話番号などの個人識別情報は、外部AI送信前に自動的にプレースホルダに置換され、応答受信後に復元されます。
メッセージ消費について
ファクトチェックの実行には、1回あたり1メッセージ枠を消費します。
Freeプランの方は累計40メッセージのうち1メッセージ、Proプランの方は実質無制限です。AI文書生成やAIチャットと同じメッセージ枠を使用するため、追加のサブスクリプションや別途課金は発生しません。
なお、ファクトチェック結果はデータベースに保存されるため、同じ文書に対する2回目以降の結果確認ではメッセージを消費しません。
競合との比較 — なぜAILEXのファクトチェックが独自なのか
AILEXが独自に実施した市場調査(50社超のリーガルテックSaaSを対象)では、AIファクトチェック機能を標準搭載しているリーガルテックSaaSは、AILEX以外に確認されませんでした。
LegalOn Technologies(LegalForce)やAI-CON Pro、LAWGUEなどの主要サービスは、契約書のリスク検出やAI文書生成を提供していますが、「生成した文書の事実関係を別のAIで検証する」機能は提供していません。
この「AIが生成し、AIが検証する」二重構造は、AIを実務に導入する際に最も重要な安全設計です。AIの出力を無条件に信頼するのではなく、構造的にエラーを検出する仕組みを組み込むことで、弁護士がAIを安心して活用できる環境を実現しています。
まとめ — ファクトチェック機能拡張の全体像
今回の拡張により、AILEXのファクトチェック機能は以下の5つの対象をカバーするようになりました。
| 対象文書 | 操作 | 備考 | |
|---|---|---|---|
| 1 | AI生成文書(27テンプレート) | 🔍ボタン | 事件詳細ページのAI生成結果セクション |
| 2 | アップロード済みPDF | 🔍ボタン | 日本語CIDフォント対応の独自テキスト抽出エンジン搭載 |
| 3 | Word文書(.docx) | 🔍ボタン | 自動テキスト抽出 |
| 4 | 契約書チェック結果 | 🔍ボタン | 既存の契約書チェック機能と連携 |
| 5 | 陳述書ドラフト(新機能) | 🔍ボタン | AI生成+ファクトチェックの一気通貫ワークフロー |
加えて、以下のUI改善を実施しました。
- ファクトチェック実行中のモーダル表示(ページ離脱防止)
- 文書管理ページ(/documents)へのファクトチェックボタン追加
- ダッシュボードへの陳述書ドラフト機能カード追加
- ナビゲーションメニューへの陳述書ドラフトリンク追加
ご利用方法
ファクトチェック機能は、AILEXの全プラン(Free/Pro)でご利用いただけます。アカウントをお持ちの方は、今すぐログインしてお試しください。
文書のファクトチェック:
- 事件詳細ページまたは文書管理ページ(/documents)を開く
- 対象文書の「🔍」ボタンをクリック
- モーダルで結果を確認
陳述書ドラフトの生成+ファクトチェック:
- ツールメニューから「📝 陳述書ドラフト」を選択
- 「✏️ 新規陳述書を生成」→ 事件選択・情報入力 → AI生成
- 生成結果の「🔍 ファクトチェック」ボタンで事実検証
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本記事で紹介したファクトチェック機能は、法律文書の事実関係をAIが検証する補助ツールです。弁護士法第72条に基づき、法的判断・訴訟戦略の策定は弁護士が行ってください。AILEXは弁護士の業務効率化を支援するツールであり、法律事務を行うものではありません。
ファクトチェック結果の正確性について、AILEXは一切の保証を行いません。AIの検証結果は参考情報として提供されるものであり、最終的な確認は弁護士の責任において行ってください。
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