「うちの事務所は訴訟だけじゃない」
パイロットユーザーの弁護士からいただいたこの一言が、AILEXの大型アップデートの出発点でした。
2026年2月、AILEXは2つの大型機能を同時にリリースしました。一つは、訴訟専用だった案件管理を交渉・契約・相続・企業法務など13カテゴリに対応させた「案件管理柔軟化」。もう一つは、破産・個人再生の申立書類をAIが自動ドラフト生成する「申立書類AIドラフト」です。
本記事では、この2つの機能がどんな課題を解決し、どのように動くのかを詳しくご紹介します。
目次
- なぜ案件管理を根本から作り直したのか
- 13カテゴリ×動的フォーム — 案件管理柔軟化の全容
- 業務フェーズ管理 — 「今、何をすべきか」が見える
- 交渉→訴訟の移行を安全に — 案件分離方式
- 破産申立の現実 — なぜ1件に10〜20時間かかるのか
- 申立書類AIドラフト — 6つの画面で完結する新しい破産申立
- AIが読み取り、整理し、警告する — 証拠突合エンジン
- 弁護士法と個人情報への配慮
- まとめ — 「弁護士の実務の70%」に応える
1. なぜ案件管理を根本から作り直したのか
訴訟は弁護士業務の20〜30%に過ぎない
AILEXの案件管理は、当初から訴訟事件を前提に設計されていました。「事件番号」「原告」「被告」「裁判所」といったフィールドは訴訟には不可欠ですが、弁護士の日常業務全体から見ると、訴訟は全体の20〜30%程度にとどまります。
小規模法律事務所の案件構成比を推定すると、交渉事件が30〜40%、契約書作成・レビューが15〜20%、法務チェック・企業法務・その他が10〜20%を占めます。つまり、従来のAILEXは弁護士の実務の約70%をカバーできていなかったのです。
交渉事件を登録しようとすると「事件番号」の入力が必須で、裁判所の事件番号がないのに何かを入力しなければならない。企業法務の適法性チェックを登録しようとすると「原告」「被告」の欄が表示されるが、そもそもそんな概念がない。相続手続きでは「事件種別」のドロップダウンに適切な選択肢がない。
こうした小さな不便の積み重ねが、「このツールは訴訟事件にしか使えないな」という印象につながります。パイロットユーザーである森崎弁護士から率直なフィードバックをいただき、案件管理の根本的な再設計に着手しました。
設計のジレンマ — シンプルさと網羅性の両立
案件管理の再設計にあたり、最も難しかったのは「すべてのケースに対応しつつ、登録時の入力項目を最小限に抑える」という相反する要件の両立でした。
13カテゴリ分のフォームフィールドをすべて表示したら、弁護士は入力する前にうんざりしてしまいます。かといって、カテゴリによって必要な情報が大きく異なるため、フィールドを削りすぎると実用的ではなくなります。
答えは、段階的入力(Progressive Disclosure)でした。
2. 13カテゴリ×動的フォーム — 案件管理柔軟化の全容
案件登録は3項目から始まる
新しい案件登録フォームは、まずカテゴリを選択するところから始まります。6つの頻出カテゴリがカード形式で表示され、残り7つは「もっと見る」ボタンで展開できます。
頻出6カテゴリとして、訴訟、交渉、契約、企業法務、相続、家事事件を配置しました。これらは小規模事務所の案件構成比を考慮して選定しています。「もっと見る」には調停・ADR、債務整理、刑事、労働、不動産、顧問、その他の7カテゴリが並びます。
カテゴリを選択すると、フォームが動的に切り替わります。最低限必要な入力項目はわずか3つで、案件名、依頼者(既存の依頼者を選択、または新規登録)、メモです。訴訟事件であれば事件番号・裁判所が追加表示されますが、交渉や契約では非表示になります。
カテゴリごとに当事者のラベルも自動的に変わります。
| カテゴリ | 当事者A | 当事者B |
|---|---|---|
| 訴訟 | 原告 | 被告 |
| 交渉 | 依頼者側 | 相手方 |
| 債務整理 | 債務者 | 債権者 |
| 家事事件 | 申立人 | 相手方 |
| 刑事 | 被疑者/被告人 | — |
| 労働 | 労働者 | 会社 |
| 顧問 | 顧問先 | — |
「詳細を入力」ボタンを展開すれば、裁判官名・書記官名・裁判所電話番号・FAXなど訴訟固有の情報も入力できます。ただし、これらはすべて任意項目です。あとから追記できる設計なので、初回登録時は最小限の情報だけで十分です。
13カテゴリの設計思想
各カテゴリは弁護士の実務フローに合わせて設計しています。
訴訟(litigation) — 従来通り、事件番号・裁判所・原告・被告のフル入力が可能です。訴訟進行に必要な裁判官情報や関連事件番号も管理できます。
交渉(negotiation) — 事件番号や裁判所は不要。相手方名、相手方連絡先、紛争金額、交渉方針メモなど、交渉実務に必要な項目だけが表示されます。
契約(contract) — 依頼者と相手方の情報に加え、契約の種類や金額を記録できます。契約書レビュー案件では相手方が「取引先」になることも多いため、ラベルもそれに合わせています。
企業法務(corporate) — 適法性チェック、意見書作成、社内規程整備など、訴訟とは全く異なるワークフローに対応します。当事者Bが不要な場合はラベルが「—」表示になります。
相続(inheritance) — 財産調査、遺産分割協議、書面準備、提出・手続きなど、相続特有のフェーズに対応した管理が可能です。
家事事件(family) — 離婚調停、親権、面会交流、養育費など家庭裁判所の手続きに対応します。
調停・ADR(mediation) — 裁判所での調停やADR機関での手続きに対応し、事件番号も(調停番号として)入力可能です。
債務整理(debt) — 自己破産、個人再生、任意整理を包括するカテゴリです。後述する「申立書類AIドラフト」機能は、このカテゴリの案件で自動的に利用可能になります。
刑事(criminal) — 被疑者・被告人の弁護に対応。起訴前・起訴後それぞれのフェーズを管理できます。
労働(labor) — 解雇、賃金未払、ハラスメントなどの労働事件に対応します。
不動産(realestate) — 売買トラブル、賃貸紛争、建築紛争などの不動産関連案件に対応します。
顧問(advisory) — 顧問契約の管理に特化。契約期間中は「稼働中」フェーズが継続し、個別の法律相談や契約レビューは別の案件として作成して紐付けられます。
その他(other) — 上記に該当しない案件のための汎用カテゴリです。
データベースは後方互換を維持
技術的な話になりますが、この大規模な機能追加にあたり、既存のデータベースを破壊しないことを最優先にしました。既存の訴訟データはそのまま保持され、新しいカラムはすべて「追加」であり、既存カラムの削除や型変更は行っていません。
案件種別は従来のcase_type(civil/criminal/family/administrative/other)に加えて、新しいmatter_categoryカラムで13カテゴリを管理します。既存の訴訟データは自動的にlitigationにマッピングされるため、アップデート後に弁護士が何かの操作をする必要はありません。
事件番号のNOT NULL制約も解除し、非訴訟案件では事件番号なしで登録できるようになりました。
3. 業務フェーズ管理 — 「今、何をすべきか」が見える
カテゴリごとに異なるワークフロー
案件管理の柔軟化で最も力を入れたのが、カテゴリ別の業務フェーズ管理です。訴訟と交渉では業務の進め方がまったく異なります。それぞれのカテゴリに合ったフェーズ(進行段階)を定義し、案件がいまどの段階にあるかをひと目で確認できるようにしました。
交渉案件のフェーズ例:
相談 → 受任 → 通知書・請求 → 交渉 → 合意・和解 → 履行確認 → 終了
相続案件のフェーズ例:
相談 → 受任 → 財産調査 → 整理 → 書面準備 → 提出・手続き → 分配 → 終了
顧問契約のフェーズ例:
提案 → 契約締結 → 稼働中 → 更新 → 終了
フェーズの進行は案件詳細ページのステッパーUIで視覚的に表示されます。現在のフェーズが強調表示され、完了済みフェーズにはチェックマークが付きます。
チェックリスト — 入力漏れをソフトに警告
フェーズを進行する際に、そのフェーズで入力が推奨される項目をチェックリストとして表示します。たとえば、交渉案件で「交渉」フェーズに進む際に「相手方名が未入力です」と黄色の警告が出ます。ただし、これは赤色のエラーではなくソフトウォーニングです。入力しなくてもフェーズは進行できます。
弁護士の実務では、情報が段階的に揃っていくのが普通です。初回相談の時点で相手方の連絡先までわかっていることは少ないでしょう。だからこそ、フェーズごとに「この段階でこの情報があると良いですよ」とやわらかく伝える設計にしています。
4. 交渉→訴訟の移行を安全に — 案件分離方式
「同じ案件なのに別建て」という弁護士の実務
弁護士から「交渉が決裂したら訴訟に移行するケースが多い。その流れをスムーズにしてほしい」という要望がありました。一見すると、案件のカテゴリを「交渉」から「訴訟」に変更すればよいように思えますが、実際の弁護士実務ではそう単純ではありません。
着手金・報酬金が交渉と訴訟で別建てになります。訴訟になると裁判所の事件番号が新たに発番されます。弁護士にとって「交渉→裁判」は同一手続きの延長ではなく、別の段階なのです。
そこでAILEXでは案件分離方式(Escalation)を採用しました。交渉案件のフェーズで「訴訟移行」を選択すると、確認ダイアログが表示されます。確認すると、元の交渉案件は自動的にクローズされ、新しい訴訟案件が作成されます。この際、依頼者情報、相手方情報、紛争金額が自動的に引き継がれるため、同じ情報を二度入力する必要はありません。
さらに、元の交渉案件と新しい訴訟案件はrelated_case_idで紐付けられ、案件詳細ページに「📎 関連案件: 交渉案件#12」と表示されます。過去の交渉経緯をいつでも参照でき、案件の全体像を把握できます。
実際のワークフロー
たとえば、個人の紛争案件が交渉から訴訟に移行するケースを考えてみます。
まず弁護士は案件を「交渉」カテゴリで登録し、フェーズを「相談→受任→通知書・請求→交渉」と進めます。交渉が決裂した場合、フェーズ選択で「訴訟移行」を選択します。確認ダイアログ「この案件を終了し、訴訟案件を作成しますか?」が表示され、OKを押すと、交渉案件が自動クローズされ(終了理由: escalated)、新しい訴訟案件がプリフィル済みの状態で作成されます。
この設計により、交渉段階のドキュメントや報酬記録は交渉案件に、訴訟段階のものは訴訟案件にきれいに分かれます。一方で、関連案件リンクにより、案件全体の流れはいつでも追跡可能です。
5. 破産申立の現実 — なぜ1件に10〜20時間かかるのか
「転記」という名の消耗戦
ここからは2つ目の大型機能、「申立書類AIドラフト」についてお話しします。
破産申立は、小規模法律事務所にとって量的に最大の業務分野の一つです。そして、その作業の大半を占めるのは法的判断ではなく、書類の分類・転記・整合性確認という定型的だが膨大な作業です。
1件の破産申立で弁護士が作成・整理する書面は10種類以上に及びます。依頼者から受領した大量の資料(通帳コピー、給与明細、クレジットカード明細、借入契約書、督促状、保険証券、車検証など20〜50ファイル)を分類し、そこから債権者名・残高・利率・契約日を一つずつ読み取って一覧表に転記し、収入・支出を家計表にまとめ、財産を目録に整理し、破産に至った経緯を時系列で陳述書に書き起こす。
この作業には1件あたり10〜20時間を要します。そして、最も厄介なのは転記ミスです。債権者一覧表の総額が陳述書に記載した総額と1円でも合わないと、裁判所から補正を求められます。5社分の残高を手計算で合算し、その合計を3つの異なる書面に転記する。人間が20社分でこれを正確にやるのは、率直に言って苦行です。
AIに向いている仕事
一方で、この作業の大半はAIが得意とする領域です。PDFからテキストを読み取り、構造化されたデータとして抽出し、一覧表を自動生成し、書面間の数値整合をチェックする。人間にとっての「転記」という消耗戦は、AIにとっては数分の処理に過ぎません。
AILEXの申立書類AIドラフト機能は、この作業時間を50〜70%短縮することを目指して設計しました。
6. 申立書類AIドラフト — 6つの画面で完結する新しい破産申立
案件詳細ページに「申立準備」タブが自動出現
この機能は独立したページではなく、案件詳細ページ内のタブとして統合されています。案件カテゴリが「債務整理」の場合、または案件名に「破産」「再生」「債務」などのキーワードが含まれる場合に、「📋 申立準備(破産・個人再生)」タブが自動的に表示されます。
タブを開くと、6つのサブ画面(ダッシュボード、資料分類、抽出結果、ドラフト、追加質問、提出パッケージ)が表示されます。すべてページ遷移なしのタブ切替式で、案件のコンテキストを維持したまま作業できます。
画面1: ダッシュボード — 進捗がひと目でわかる
申立準備の全体進捗がプログレスバーと6つのカードで表示されます。
資料(何件アップロード済み、何件が未分類)、債権者(何社登録、何社が要確認)、財産(何件登録、何件が要確認)、収支(収入合計、支出合計)、ドラフト(何件生成済み、何件確定済み)、追加質問(何件回答済み)が一覧できます。
カードには色分けされたステータスバッジが付いており、赤は「要対応」、黄色は「要確認」、緑は「完了」を意味します。弁護士はダッシュボードを見るだけで、「あとは財産の確認が1件と、陳述書のドラフト確定だけだ」とわかるわけです。
画面2: 資料分類 — AIが16種別に自動分類
依頼者から受領した資料をアップロードすると、AIが16種別に自動分類します。
AILEXはClaude Haikuモデルを使用して高速に文書を分類します。通帳コピー、給与明細、源泉徴収票、クレジットカード明細、借入契約書、督促状、不動産登記簿、車検証、保険証券、年金通知書、住民票、戸籍謄本、家計メモ、その他の領収書類、依頼者陳述メモ、裁判関連書類の16種別を識別します。
各文書にはAIの分類信頼度(高・中・低)がバッジで表示されます。信頼度が高い場合は緑、中程度は黄、低い場合は赤で表示され、弁護士は低信頼度の文書だけを確認すれば済みます。もちろん、分類は手動で修正できます。
30ファイルの一括分類でも約60秒以内に完了するよう並列処理を行っており、待ち時間のストレスを最小限に抑えています。
画面3: 抽出結果 — AIが資料から情報を自動抽出
分類された資料からAIが情報を自動抽出し、4つのサブタブ(債権者・財産・収入・支出)に整理します。これがこの機能の中核部分です。
債権者タブでは、クレジットカード明細や借入契約書から、債権者名、現在残高、月々の返済額、利率、契約日を自動抽出して一覧表にまとめます。各行には根拠資料へのリンクと信頼度バッジが付きます。
財産タブでは、通帳コピーから預金残高、車検証から車両情報、保険証券から解約返戻金見込額、不動産登記から不動産情報を自動抽出します。
収入タブでは、給与明細から手取り額と控除内訳、源泉徴収票から年収を自動抽出します。
支出タブでは、家計メモやクレジットカード明細から住居費、食費、光熱費、通信費、保険料、教育費などのカテゴリ別支出を抽出・推定します。
ここで使用するAIモデルはClaude Sonnetで、日本語の法律文書に対する高い読解精度を活かしています。もちろん、すべての抽出結果にはPIIマスキングが適用されており、依頼者の実名や個人情報がAIのAPIに送信されることはありません。
整合性チェックも自動実行されます。「〇〇ファイナンス」と「○○ファイナンス」のような表記揺れを検出して統合を提案したり、同一債権者・同一金額の二重計上を警告したり、日付の矛盾を指摘したりします。これまで弁護士が目視で行っていたクロスチェックをAIが自動的に行い、ミスを未然に防ぎます。
画面4: ドラフト生成 — 最大9種の書面をAIが自動作成
抽出結果をもとに、AIが申立書類のドラフトを自動生成します。
Phase 1(個人破産)では6種類の書面を生成できます。破産申立書、陳述書(破産に至った経緯)、債権者一覧表、財産目録、家計収支表、添付書類一覧です。Phase 2(個人再生)では再生手続開始申立書、再生計画案、財産状況等報告書の3種類が追加されます。
生成したいドラフトをチェックボックスで選択し、テンプレート(東京地裁書式がデフォルト)を選んで「生成」ボタンを押すだけです。ドラフトはバージョン管理されており、資料追加後の再生成でも旧バージョンは保持されます。差分表示で何が変わったかを確認できるため、手動で加えた修正が上書きされる心配はありません。
ドラフトの内容はインラインで編集可能です。各フィールドには根拠資料へのリンクが付いており、「この金額はどの資料から来たのか」をクリックひとつで確認できます。確認が完了したドラフトを「確定」すると、Word形式でダウンロード可能になります。
画面5: 追加質問 — 依頼者へのヒアリング漏れを防ぐ
AIが抽出結果の不足情報や矛盾点を分析し、依頼者への追加質問リストを自動生成します。
たとえば、ある債権者の残高が資料から読み取れない場合、「△△ファイナンスの現在の残高を教えてください」という質問が自動生成されます。通帳の入出金に大きな不明出金がある場合は、「〇月〇日の出金30万円の用途を教えてください」という質問が生成されます。
質問には「未回答」「回答済み」のステータスバッジが付き、回答を記録すると抽出データに自動反映されます。初回のヒアリングで聞き忘れがちな項目をAIが網羅的にカバーしてくれるため、依頼者への連絡回数を減らすことができます。
画面6: 提出パッケージ — ZIP一括ダウンロード
確定済みの書面一式をZIPファイルとして一括ダウンロードできます。ファイルは以下のような命名規則で整理されます。
01_破産申立書.html
02_陳述書_破産に至った経緯.html
03_債権者一覧表.html
04_財産目録.html
05_家計収支表.html
06_添付書類一覧.html
裁判所への提出に適した形式でパッケージ化されるため、ダウンロードしたZIPの中身をそのまま利用できます。
7. AIが読み取り、整理し、警告する — 証拠突合エンジン
すべてのフィールドに「根拠」がある
申立書類AIドラフトの設計思想で最もこだわったのが、すべての重要フィールドに根拠資料へのリンクを自動付与することです。
破産申立書面の信頼性は「各記載に根拠がある」ことで担保されます。「債務総額548万円」と記載するなら、その内訳が債権者一覧表に明示され、各債権者の残高がクレジットカード明細や借入契約書で裏付けられている必要があります。
AILEXのエビデンスリンクは4段階の信頼度で表示されます。
高信頼度(🟢 緑) — 資料テキスト内に完全一致する数値・名称が存在。たとえば、クレジットカード明細に「残高: 1,200,000円」と明記されており、債権者一覧表の同じ債権者の残高が1,200,000円と一致する場合です。
中信頼度(🟡 黄色) — 資料テキスト内に近似値(±5%以内)が存在。たとえば、督促状には「約120万円」とあり、AIが1,200,000円と推定した場合です。差異が表示されるため、弁護士が正確な値を判断できます。
低信頼度(🟠 橙色) — AIが文脈から推定したが、直接的な数値一致がない場合です。「AI推定」ラベルが付き、弁護士に確認を促します。
根拠なし(🔴 赤) — 根拠資料が見つからない場合です。「根拠不足」として目立つ警告が表示されます。
弁護士はダッシュボードで赤い項目だけを確認すれば、何が足りないのかがすぐにわかります。「この債権者は根拠資料がないので、依頼者に確認が必要」「この財産の評価額はAI推定なので、査定書を取得すべき」といった判断が迅速にできるようになります。
書面間の数値整合チェック
従来、弁護士が最も神経を使っていたのが書面間の数値整合です。債権者一覧表の総額が陳述書に記載した総額と一致しない、家計収支表の返済額合計が債権者一覧の月返済額合計と一致しない——こうしたミスは裁判所から補正を求められる原因になります。
AILEXの整合性チェックは、以下の項目を自動的に検出します。
債権者名の表記揺れ — 「〇〇ファイナンス」と「○○ファイナンス」(丸の大きさが違う)、「アコム(株)」と「アコム株式会社」のような表記の違いを検出し、「同一債権者の可能性があります。統合しますか?」と提案します。
二重計上 — 同一債権者・同一金額・同一契約日の組み合わせが複数存在する場合に警告します。
日付の矛盾 — 契約日が最終返済日より後になっている、借入日が未来日になっているなどの矛盾を検出します。
残高不一致 — 同一債権者の残高が資料間で異なる場合(たとえば督促状では120万円、クレジットカード明細では115万円)に不一致を指摘し、どちらの資料の値を採用するか弁護士に判断を求めます。
収支バランス — 月収合計が月支出合計(返済除く)を下回っている場合に情報を表示します。破産案件では収支がマイナスであることが多いため、これはエラーではなく情報提供として表示されます。
債務総額の書面間整合 — 債権者一覧表の合計額と陳述書に記載された債務総額が一致しない場合に警告します。
免責不許可事由の注意表示
AIが抽出中に免責不許可事由に関連する可能性のある記述を検出した場合、注意フラグを表示します。
たとえば、依頼者の陳述メモに「パチンコ」「競馬」「FX」などのキーワードが含まれている場合、「免責不許可事由(破産法252条1項4号・浪費)に関連する可能性のある記述が含まれています」という注意が表示されます。
ここで重要なのは、AILEXは「該当する」「該当しない」の法的判断は一切行わないということです。関連する可能性のある事実を注意表示するのみで、最終的な判断は弁護士に委ねます。これは弁護士法第72条に抵触しないための重要な設計判断です。
8. 弁護士法と個人情報への配慮
AIは「補助」であり「判断」ではない
AILEXの申立書類AIドラフト機能では、すべての生成物に以下の免責表示が付与されます。
本ドラフトはAIが資料から自動抽出・整理したものであり、法的助言を構成しません。必ず弁護士が内容を確認・修正のうえ提出してください。AIの抽出・分類には誤りが含まれる可能性があります。
「申立書を作成しました」ではなく「申立書のドラフトを生成しました」と表記します。AIが行うのは情報の抽出・整理・ドラフト生成という事務的な補助であり、法的判断ではありません。
PIIマスキング — 依頼者の同意説明は不要
AILEXのすべてのAI機能にはPII(個人識別情報)自動マスキングが適用されます。申立書類AIドラフトでも同様に、外部AIのAPIに送信される前に、依頼者名・住所・電話番号・口座番号などがプレースホルダに自動置換されます。AIの応答を受信した後に元の情報に復元するため、AIサービス側に個人情報が渡ることはありません。
これにより、弁護士がクライアントに「AIサービスを利用してもよいか」という同意説明をする必要がなくなります。AILEXは「もし同意説明が必要になったら弁護士事務所は使ってくれない」という現実を踏まえ、同意説明不要の設計を一貫して維持しています。
監査ログ — すべての操作を記録
資料のアップロード、AI分類、AI抽出、ドラフト生成、手動編集、確定、エクスポートなど、すべての操作が監査ログに記録されます。「誰が」「いつ」「何を」「どのAIモデルで」「処理時間は何秒だったか」が追跡可能です。
管理者画面から監査ログを確認できるほか、AI利用のコスト推計もダッシュボードに表示されるため、事務所のAI利用状況を把握できます。
9. まとめ — 「弁護士の実務の70%」に応える
2つの機能がもたらす変化
案件管理柔軟化と申立書類AIドラフトは、それぞれ異なる課題を解決しますが、根底にある思想は共通しています。弁護士の実務に寄り添い、弁護士が本来注力すべき法的判断以外の作業負担を最小化するということです。
案件管理柔軟化は、「訴訟以外の案件を管理できない」という構造的な制約を解消し、弁護士の日常業務の70%をカバーできるようにしました。最低3項目で案件を登録でき、カテゴリに応じたフォーム、フェーズ管理、チェックリスト警告により、どんな種類の案件でもストレスなく管理できます。
申立書類AIドラフトは、破産・個人再生の申立準備にかかる10〜20時間の作業のうち、資料の分類・転記・整合性確認という定型作業をAIで自動化します。弁護士は「AIが整理した情報を確認し、法的判断が必要な部分に集中する」という本来あるべき働き方に近づきます。
今後の展開
案件管理柔軟化については、依頼者ポータルとの連携(依頼者がフェーズ進捗を確認できる機能)や、Googleカレンダー/Outlook連携による期日自動同期を予定しています。
申立書類AIドラフトについては、Phase 2として個人再生(小規模個人再生・給与所得者等再生)への対応を進めています。再生計画案の弁済額参考計算、清算価値保障原則の充足確認補助など、個人再生特有の書面生成機能が追加されます。
さらに、事務所独自のテンプレートを管理画面からアップロードし、それを使ってドラフト生成できるカスタムテンプレート機能も計画中です。東京地裁書式以外の裁判所書式についても、ユーザーからのリクエストに基づいて順次対応していきます。
「訴訟だけじゃない」弁護士の日常業務すべてに、AILEXは応えていきます。
本記事で紹介した機能は、AIによるドラフト・参考資料の自動生成です。弁護士法第72条に基づき、生成された内容の最終確認・判断は弁護士が行ってください。AILEXは弁護士の業務効率化を支援するツールであり、法律事務を行うものではありません。
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