日弁連会長声明(2026年5月21日)を読む|全面施行への評価と懸念
全面施行日に公表された声明
2026年5月21日、民事訴訟法等の一部を改正する法律の全面施行にあわせ、日本弁護士連合会が会長声明を公表しました。単なる歓迎表明ではなく、実務上の危険と制度運営への注文が具体的に述べられている点に特徴があります。弁護士業務に直結する内容として押さえておく価値があります。
評価されている点
電子申立て、電子納付、システム送達、訴訟記録の電子化という一連の変化について、日本の民事訴訟実務を大幅に変革するものと位置づけられています。遠隔地の裁判所への申立てが事務所から完結すること、記録の取得のために裁判所へ出向く必要が減ることは、実務上の負担軽減として明確な意味を持ちます。
指摘されている4つの懸念
①TreeeS導入後の「複数手続の併存」による過誤
声明では、次期システムであるTreeeSが2027年度中に導入される見込みであること、そして導入後は申立て方法の異なる数種類の事件が同時に併存するため、利用者および裁判所関係者は過誤が生じないよう注意する必要があることが指摘されています。
これは実務上きわめて重い指摘です。現在でも、2026年5月20日以前に提起された事件と以後の事件で扱いが異なります。ここにTreeeSが加われば、同じ事務所の中で3種類以上の提出ルールが並走することになります。事件ごとにどのルールが適用されるかを取り違えるリスクが、構造的に高まります。
②司法予算の確保
裁判システムの定着と利便性確保は裁判所の責務であり、利用者の意見を反映した継続的な改善と、機器の適宜更新を含む司法予算の十分な確保が求められています。システムは作って終わりではないという指摘です。
③デジタルデバイドへの配慮
障がいのある人や高齢者など、デジタル利用に不安を抱える人に対して手続上の配慮を怠らないよう求めています。本人訴訟を行う市民のサポートについても言及があります。
④司法アクセスの縮小への懸念
デジタル化の進展を理由として、裁判所支部の統廃合や裁判官の非常駐化など、市民の司法へのアクセスを縮小する施策につながることがあってはならないと明確に述べられています。効率化の議論が、司法の物理的な近接性を損なう方向に流れることへの牽制です。
今後のスケジュールに関する記載
民事執行・倒産・家事事件・非訟手続などのデジタル化についても、2028年6月までに全面施行されることを前提に、適切に意見を述べていく姿勢が示されています。
実務への含意
- 事件ごとの適用ルールを台帳で管理する必要がある。提起日と手続類型で提出方法が変わるため、記憶に頼ると必ず取り違える
- TreeeS導入は2027年度中の見込みであり、mints運用の習熟と並行して次の移行を視野に入れる必要がある
- 家事・人事訴訟の扱いは別建てであることを事務所内で徹底する
AILEXで「どの事件がどのルールか」を管理する
併存リスクの本質は、人間が事件ごとに正しいルールを思い出せるかどうかに依存していることです。AILEX(エーアイレックス)は、複数事件の提出期限・提出方法・送達状況を一元管理し、事件単位で必要な対応を可視化します。
ルールが増えるほど、記憶ではなく仕組みで管理する必要性が高まります。声明が指摘する過誤リスクへの現実的な備えは、そこにあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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