ファクトチェック(法務チェックAI)でAI回答の正確性を検証する方法
AIが引用した判例は実在するのか。条文番号は正しいのか——生成AIを法律業務に活用する上で、避けて通れないのが ハルシネーション(事実と異なる情報の生成) のリスクです。
日弁連AI戦略ワーキンググループが2025年9月に公表した注意事項でも、AI出力の検証義務は実務上の重要テーマとして位置づけられています。AIの回答をそのまま採用せず、必ず一次資料で裏取りすること。これは弁護士がAIを業務利用する際の基本原則です。
AILEXの ファクトチェック(法務チェックAI) は、この検証作業を効率化するための機能です。AI法律相談チャットの回答に対して、チャットAIとは異なる独立したAIエンジンで法的根拠・判例の妥当性を検証し、出典URL付きで結果を表示します。
この記事では、ファクトチェック機能の仕組み、操作方法、検証結果の読み方、そして実務で効果的に活用するためのポイントを詳しく解説します。
なぜファクトチェックが必要なのか
AIのハルシネーション問題
生成AIは「もっともらしい回答」を生成する能力に長けていますが、その内容が必ずしも正確とは限りません。法律分野で特にリスクが高いのは以下のようなケースです。
- 架空の判例引用 — 存在しない事件番号や裁判所名を生成してしまう(米国のMata v. Avianca事件では、弁護士がChatGPTの架空判例をそのまま準備書面に引用し、懲戒処分を受けました)
- 条文番号の誤り — 正しい法律名に存在しない条文番号を組み合わせて回答する
- 法改正前の情報 — 既に改正済みの旧法の内容に基づいて回答してしまう
- 判例の結論の取り違え — 実在する判例について、結論や射程を誤って説明する
これらのリスクに対して、AILEXでは2つのアプローチで対策しています。ひとつはシステムプロンプトへの免責表示(「AIの回答は参考情報です。ファクトチェックを実施し、最終的な法的判断は、ご自身で行ってください」)。もうひとつが、本記事で解説するファクトチェック機能です。
「別のAI」で検証する意味
AILEXのファクトチェックは、チャットAI(Claude)の回答を、別のAIエンジンで独立に検証する仕組みです。法律専門のシステムプロンプトを使い、回答に含まれる法的根拠・判例の妥当性をWeb上の情報源と照合して検証します。
同じAIに「自分の回答を検証して」と頼んでも、同じ誤りを繰り返す可能性があります。異なるAIエンジンを使うことで、独立した視点からの検証が可能になります。
⚠️ 重要: ファクトチェック機能も完全ではありません。最終的な法的判断は、必ず弁護士ご自身で一次資料(裁判所サイト、判例データベース、e-Gov法令検索など)を確認した上で行ってください。ファクトチェックはあくまで「検証の補助」であり、検証そのものを代替するものではありません。
ファクトチェックの操作手順
Step 1: チャットでAIに質問する
まず、AI法律相談チャット(/chat)で通常どおり質問します。一般モードでも、事件コンテキストモード(事件を選択した状態)でも、ファクトチェック機能は同じように利用できます。
Step 2: 「🔍 ファクトチェック」ボタンをクリック
AIの回答が表示されると、各回答メッセージの下に 「🔍 ファクトチェック」ボタン が表示されます。検証したい回答のボタンをクリックしてください。
Step 3: 検証結果を確認する
ボタンをクリックすると、モーダル(ポップアップウィンドウ) が開きます。
- まず 「法務チェックAIで検証中…」 というアニメーションが表示されます
- 検証が完了すると、結果がモーダル内に表示されます
- 結果には 出典URL が番号付きで記載されています
- 出典番号はクリック可能 で、クリックすると対応する出典箇所がハイライト表示されます
- URLは自動的にクリック可能なリンクに変換されるため、原典をすぐに開いて確認できます
📌 モーダルの操作: 検証結果のモーダルは、背景をクリックしても閉じません(誤操作防止のため)。モーダル内の閉じるボタンを使って閉じてください。
Step 4:(任意)検証結果をチャットに送信する
モーダル内に 「💬 チャットに送信」ボタン があります。このボタンをクリックすると、ファクトチェック結果がチャットの会話に投入されます。
これにより、検証結果を踏まえた追加の質問をAIに行うことができます。たとえば以下のようなワークフローが可能です。
- AIが判例Xを引用して回答
- ファクトチェックで判例Xの妥当性を検証
- 検証結果をチャットに送信
- 「ファクトチェック結果を踏まえて、この判例の射程をもう少し詳しく説明してください」と質問
検証結果の読み方
出典URLの確認
ファクトチェック結果に含まれる出典URLは、検証AIがWeb上で参照した情報源のリンクです。以下のような公的・信頼できるサイトからの出典が含まれることが多いです。
- 裁判所サイト(courts.go.jp)— 判例検索結果
- e-Gov法令検索(laws.e-gov.go.jp)— 条文の原文
- 官公庁サイト — 法務省、厚生労働省などのガイドライン
- 法律専門サイト — 判例解説、法律論文
出典番号をクリックするとハイライト表示されるため、どの出典がどの記述の根拠になっているかを視覚的に確認できます。
検証結果で注目すべきポイント
ファクトチェック結果を読む際は、特に以下のポイントに注目してください。
- 判例の実在性 — AIが引用した判例が実在するかどうかの確認
- 条文の正確性 — 引用された条文番号と内容が現行法と一致しているか
- 法改正の反映 — 回答が最新の法改正を反映しているか
- 結論の整合性 — 判例の結論がAIの説明と一致しているか
検証結果が不十分な場合
ファクトチェック結果が曖昧だったり、十分な裏付けが得られない場合があります。その場合は以下の方法で追加検証を行ってください。
- 裁判所 判例検索(https://www.courts.go.jp/hanrei/index.html)で判例を直接検索
- e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)で条文の原文を確認
- Westlaw Japan や TKC LEX/DB など、事務所で契約している商用判例データベースで照合
メッセージ消費に関する注意事項
ファクトチェックは 1回につきメッセージ1回分 を消費します。これはAIチャットのメッセージ数と同じカウントに含まれます。
| プラン | チャットメッセージ | ファクトチェック |
|---|---|---|
| FREE | 40回(累計) | メッセージ枠に含む |
| PRO(¥49,000/月) | 無制限 | 無制限 |
FREEプランでは、チャットの質問とファクトチェックを合わせて累計40回が上限です。たとえば、チャットで30回質問してファクトチェックを10回実行すると、合計40回に達します。
📌 カウント方式: メッセージ数は累計方式で管理され、月ごとのリセットはありません。FREEプランで本格的にファクトチェックを活用する場合は、PROプランへのアップグレードをご検討ください。
ファクトチェック結果の保存
ファクトチェックの結果は factchecks テーブル に自動保存されます。保存される情報は以下のとおりです。
- 検証対象のAI回答(original_text)
- 検証結果の全文(result)
- 出典情報(citations / JSON形式)
これにより、過去に実施したファクトチェックの結果を後から参照することが可能です。
ファクトチェックを効果的に使うための5つのポイント
1. すべての回答にファクトチェックをかける必要はない
ファクトチェックはメッセージを消費するため、すべてのAI回答に実行する必要はありません。特に以下のような回答に絞って実行すると効率的です。
- 具体的な判例を引用している回答 — 事件番号、裁判所名、判決年月日が含まれるもの
- 具体的な条文番号を挙げている回答 — 「民法第〇〇条」のように条文を引用しているもの
- 自分の認識と異なる回答 — 直感的に「本当か?」と感じた内容
- 書面や報告書に引用する予定の情報 — 実務文書に反映する可能性がある回答
2. 判例引用は最優先で検証する
法律実務において最もリスクが高いのは、架空の判例を引用してしまうことです。AIが「最判平成〇年〇月〇日」のように具体的な判例を引用した場合は、必ずファクトチェックをかけてください。ファクトチェック結果の出典URLに裁判所サイトや判例データベースへのリンクが含まれていれば、実在する判例である可能性が高いと判断できます。
3. 検証結果をチャットに戻して深掘りする
「💬 チャットに送信」機能を活用して、ファクトチェック結果を踏まえた追加質問を行うと、AIの回答の精度がさらに高まります。たとえば、ファクトチェックで一部の判例が確認できなかった場合、「先ほどの判例Xが確認できませんでした。この論点を支持する他の判例はありますか?」と質問できます。
4. 事件コンテキストモードと組み合わせる
事件コンテキストモード(事件を選択した状態)でAIに質問し、その回答をファクトチェックするという流れが最も実務的です。事件の具体的な文書に基づいた回答の中で引用される判例や条文を検証することで、準備書面等の起案に直結する正確な情報を得られます。
5. ファクトチェック結果も「参考情報」として扱う
ファクトチェック機能はAI回答の検証を効率化するツールですが、ファクトチェック結果自体にも限界があります。最終的には、以下の一次資料で自ら確認することが弁護士の検証義務を果たすために不可欠です。
- 裁判所 判例検索 — https://www.courts.go.jp/hanrei/index.html
- e-Gov法令検索 — https://laws.e-gov.go.jp/
- 商用判例データベース — Westlaw Japan、TKC LEX/DB など
他のAILEX機能との連携
ファクトチェック機能は、AILEXの他の機能と組み合わせることで真価を発揮します。
AIチャット × ファクトチェック
最も基本的な組み合わせです。チャットで法律問題を質問し、回答中の判例・条文をファクトチェックで検証します。検証結果をチャットに戻すことで、修正された情報に基づいた追加の対話が可能です。
AI文書生成 × チャット × ファクトチェック
AI文書生成(/generate)で作成したドラフトの内容をチャットで質問し、AIの回答をファクトチェックするワークフローです。たとえば、生成された準備書面の草案に含まれる判例引用について「この判例の射程と本件への適用可能性を検討してください」とチャットで質問し、その回答をファクトチェックする流れです。
参照URL設定 × ファクトチェック
参照URL管理で事務所が契約しているデータベース(Westlaw Japan等)のURLを追加しておくと、AIチャットの回答の中でそれらのデータベースに言及されることがあります。ファクトチェックと合わせて、複数の情報源から回答の正確性を確認するクロスリファレンスが可能になります。
よくある質問
Q: ファクトチェックは何回まで使えますか?
FREEプランではAIチャットメッセージと合算で累計40回まで、PROプラン(¥49,000/月)では無制限です。ファクトチェック1回 = メッセージ1回分の消費です。
Q: ファクトチェック結果は後から見返せますか?
はい。検証結果はfactchecksテーブルに自動保存されます。
Q: 事件コンテキストモードでなくてもファクトチェックは使えますか?
はい。一般モード(事件を選択していない状態)のAI回答に対しても、同じようにファクトチェックを実行できます。
Q: ファクトチェック結果のURLが開けません
出典URLの一部は、アクセスに有料の判例データベースの契約が必要な場合があります。裁判所サイトやe-Gov法令検索など公開サイトのURLは無料でアクセス可能です。
Q: ファクトチェックにはどのくらい時間がかかりますか?
回答の内容量にもよりますが、通常は数秒〜十数秒程度で結果が表示されます。検証中は「法務チェックAIで検証中…」のアニメーションが表示されますので、結果が表示されるまでお待ちください。
まとめ
AILEXのファクトチェック(法務チェックAI)は、AI回答に含まれる法的根拠・判例の妥当性を独立したAIエンジンで検証し、出典URL付きで結果を提示する機能です。
活用のポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 判例引用を最優先で検証 — 架空判例のリスクが最も高いため、具体的な判例が引用されたら必ず実行
- 出典URLで原典確認 — 検証結果の出典番号をクリックし、リンク先の一次資料を確認
- チャットに戻して深掘り — 「💬 チャットに送信」で検証結果を踏まえた追加質問が可能
- メッセージ消費を意識 — 1回 = 1メッセージ消費。FREEプランでは重要な回答に絞って実行
- 最終確認は一次資料で — ファクトチェック結果も参考情報。裁判所サイトや判例DBでの裏取りが最終ステップ
生成AIの利活用において、検証義務を果たすことは弁護士の職業的責任です。AILEXのファクトチェック機能を活用して、AIの利便性と法的正確性の両立を実現してください。
ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
- メール: info@ailex.co.jp
- 公式サイト: https://ailex.co.jp
この記事はAILEX v5t時点の情報に基づいています。
